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免疫療法のためのウイルス特異的ヒトCD8T細胞の解析

学友会セミナー

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2004年開催 学友会セミナー

開催日時: 平成16年2月16日(月) 15:30 ~ 17:00
開催場所: 1号館2階会議室
講  師: 滝口 雅文 博士
所  属: 熊本大学エイズ学研究センター・ウイルス制御分野
演  題: 免疫療法のためのウイルス特異的ヒトCD8T細胞の解析
概  要:

ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)やEBウイルス(EBV)等のウイルスは、健康な人では持続感染を起こしているが、病気を起こすようなウイルスの増殖をしない事が知られている。 しかし骨髄移植後やエイズなど免疫不全の状況では、これらのウイルスは肺炎、網膜炎、リンパ腫などをおこし、致命的になる事も稀ではない。これらのウイルス感染症の治療法には、ウイルス特異的なCD8T細胞を in vitroで増やし移入する事が考えられる。我々は健康な成人と免疫不全を持った患者で、これらウイルスに対するCD8T細胞をHLAクラスIテトラマーを用いて解析し、さらに特異的CD8T細胞を用いた治療法の可能性を検討した。

まず、人のCD8T細胞を細胞表面分子発現に基づいた分類を試み、CD27、CD28、CD45RA分子による、機能を反映したCD8T細胞の分類を確立した。また健康成人の末梢血中のHCMV及びEBV特異的CD8T細胞を、 HLAクラスIテトラマーを用いて検出し、さらにこれらのCD8T細胞の機能とphenotypeの解析した。その結果、EBV特異的CD8T細胞は、細胞傷害性活性を持たず、memory phenotype示した。一方、HCMV特異的CD8T細胞は細胞傷害性活性を持ち、effector phenotypeを示した。これらの結果は、健康な成人におけるこれらのウイルスの増殖と細胞性免疫と関係を示していると考えられた。一方、エイズ等でみられるEBVリンパ腫や骨髄移植後のHCMV感染症では、特異的CD8T細胞はほとんど誘導されておらず、これらのウイルスに対する特異的CD8T細胞による細胞療法が期待される。現在、これらのウイルスに対する特異的CD8T細胞の治療について検討しており、その可能性を議論する予定である。

世 話 人: ○中内 啓光(75330)、高津 聖志