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多能性幹細胞からの臓器創出の現状と今後の展望

学友会セミナー

学友会セミナー:2020年02月18日

開催日時: 2020年02月18日 19:00 ~ 20:00
開催場所: 1号館地下 B-1E会議室
講師: 山口 智之
所属: 東京大学医科学研究所 幹細胞治療部門・特任准教授
演題: 多能性幹細胞からの臓器創出の現状と今後の展望
概要:

臓器移植におけるドナー不足は非常に深刻であり、この問題を解消するために、臓器創出技術を開発することが急務である。
多能性幹細胞はその多能性を維持したまま無限に増殖ができ、動物の発生環境に寄与することができるキメラ形成能という能力をもっている。この多能性幹細胞のみがもつユニークな特徴を活かし、数多くの遺伝子改変マウス、ラットが作製されてきた。我々はこの多能性幹細胞のキメラ形成能を利用した”胚盤胞補完法”により、動物体内に多能性幹細胞由来の臓器を作製し、移植治療に用いるというコンセプトを考案した。これまでに、異種間の胚盤胞補完によりマウス体内にラットの膵臓、ラット体内にマウスの膵臓、腎臓を作製した。胚盤胞補完法によって作製された臓器は機能も形態も生体内の臓器と同様であり、さらに、ラット体内に作製したマウス膵臓から単離した膵島を糖尿病モデルマウスに移植したところ、1年以上免疫抑制剤無しで、正常血糖値を維持することができた。これにより、異種動物体内での臓器再生の有効性と移植後の安全性が確認され、我々の目指す再生医療のコンセプトを実証することに成功した。
令和元年10月にはヒトiPS細胞をもちいた動物性集合胚の研究が承認され、動物体内でのヒト臓器作製研究がスタートした。この技術がヒト臓器創出に応用されることが期待されるが、それには非常に高い壁があることも事実であり、これまでとは異なる角度のアプローチも必要であると考える。本セミナーでは胚盤胞補完法を利用した臓器再生法について概説するとともに、ヒトの臓器創出に向けた今後の展望についても議論したい。

世話人: 〇武川 睦寛 (分子シグナル制御分野)
 谷口 英樹 (再生医学分野)