東京大学医科学研究所

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学友会セミナー

学友会セミナー:2019年6月27日

開催日時: 2019年6月27日 16:00 ~ 17:00
開催場所: 2号館2階 大講義室
講師: 遠藤 英也
所属: 九州大学名誉教授  鳥取大学名誉教授
東京大学医科学研究所 分子発癌分野 客員研究員
演題: 私の、医科研における、抗ガン剤開発への歩み
S100A4-targeted peptide inhibitor
概要:

細胞の不死化と癌化の関連を想定した作業仮説に端を発し、不死化遺伝子のクローニングを経て、分離された遺伝子のコードする蛋白質がS100A4と同定され、翌1989年同じ遺伝子・産物が高転移乳がん細胞からも分離同定されるに及び、S100A4は一躍、metastasis-promoting protein として脚光を浴び、爾来30年間、膨大な研究業績に支えられ今日に至っている。その経緯の中で、癌の転移の克服が、癌治療の命題の一つと云う観点から、S100A4 inhibitor の探査も行われてきた。S100A4は小さな酸性のカルシウム結合蛋白質からなるS100 familyの一員で、カルシウム依存的にeffector蛋白質と結合する特性が知られ、既に数種のeffector 蛋白が報告されている。一方S100A4の各種、組織細胞に於ける発現をみると、色々な癌で良く発現している他、正常なリンパ組織、マクロファージ、血管内皮細胞等にも結構な量の発現が観察される。以上の知見を踏まえて1995年、医科研森人体病理研究室でS100A4 inhibitorの探査実験を開始、先ず酵母の2 hybrid screen法を用いて、自前の、新effector 蛋白質、methionine aminopeptidase 2 (MetAP2)を得た。次いで、その結合ドメインを60aa;MetAP2(170-229)に濃縮し、それを血管内皮細胞に過剰発現させたところ 強い増殖阻害が観察された。S100A4に対するMetAP2と60aaの競合が齎したこの結果からS100A4-targeted peptide inhibitorの想定が浮上した。この想定を検証すべく60aaを更にN端39aa(NBD)に濃縮し、その阻害能を調べたところ、腫瘍血管形成阻害を介した抗腫瘍性が示された。他方NBDの構造特異性から機能と構造の相関も明らかにされた。NBDには亦、ヒト乳がん細胞の浸潤能を1/2に低下させる阻害効果が観察され、分子機構も解明されたが、その肺転移能に及ぼす効果については目下検証中である。最後に、S100A4-targeted peptide inhibitorについて考察を試みたい。

世話人: 〇井上 純一郎 (分子発癌分野)
 山梨 裕司 (腫瘍抑制分野)