東京大学医科学研究所

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学友会セミナー

学友会セミナー:2018年12月5日

開催日時: 2018年12月5日 17:00 ~18:00
開催場所: 2号館 小講義室
講師: 樽本 雄介
所属: Cold Spring Harbor laboratory・Postdoctoral Fellow
演題: 機能ドメインを標的としたCRISPRスクリーニングによるがんの新たな治療標的の探索
概要:

がんは、悪性化の過程でDNA変異やエピジェネティックな機構によって特徴的な遺伝子発現パターンを獲得する。がんの生存・増殖はそれらの遺伝子発現に大きく依存しているため、遺伝子発現を制御する転写ネットワークはがん治療の重要な標的となりうる。しかし、一般的に転写因子を直接標的とする小分子阻害剤の開発は困難である場合が多い。私たちの研究室では以前に、機能的なタンパク質ドメインを標的としたカスタムガイドRNAライブラリーを用いたCRISPRスクリーニングによって、従来のライブラリーよりも効果的にがんの依存性が特定できることをマウス細胞株での実験にて報告している。今回、小分子化合物の薬剤標的となるようながんの新たな依存性を見つけるため、様々なヒトがん細胞株へとこのスクリーニングを適用拡大した。その1つとして、キナーゼを対象とするスクリーニングから、がん抑制遺伝子として良く知られるLKB1が急性骨髄性白血病(AML)の維持に必須であること、およびその下流のキナーゼであるSalt-inducible kinase(SIK)が中心的役割を担うことを明らかにした。MEF2Cは細胞系譜特異的に発現する転写因子の1つであり、一部のAMLにおいて高発現し悪性化を促進することが知られている。私たちは、遺伝学的およびエピジェネティックな解析を通してSIK依存性の分子機構を明らかにし、SIKがMEF2Cの制御に重要であること、SIKとMEF2Cに対するAMLの依存性が強く相関することを見いだした。このことは、これまで直接の薬剤標的とすることができなかった転写因子MEF2Cの機能を、小分子化合物によるSIKキナーゼ活性の阻害によって抑制できることを示している。このような相関した依存性は転写因子とキナーゼの関係に限らないと考えられることから、機能ドメイン標的CRISPRスクリーニングを拡大することでさらなるがんの治療標的が見つかることが期待される。

世話人: 〇西山 敦哉 (癌防御シグナル分野)
 合山 進 (細胞療法分野)