東京大学医科学研究所

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学友会セミナー

学友会セミナー:2018年8月2日

開催日時: 2018年8月2日 16:00 ~ 17:00
開催場所: 1号館2階 2-3会議室
講師: 川上 正敬
所属: Instructor, MD Anderson Cancer Center, Department of Thoracic/Head and Neck Medical Oncology
演題: anaphase catastroph誘導によるがん治療の可能性
概要:

がん細胞はそのhallmarkとして知られる染色体不安定性を背景として、しばしば過剰な中心体を持つ。過剰中心体はaneuploidyを引き起こし、外的ストレスへの耐性や細胞増殖促進などがん細胞の生存に有利な特性をもたらす一方で、細胞分裂時の染色体の分離異常は細胞に有害である側面も持つ。我々は肺癌細胞においてCDK1/CDK2阻害により、細胞分裂の際に過剰中心体の二極への収束が阻害され、細胞の多極分裂とそれに伴う染色体分離異常を経て娘細胞にアポトーシスが誘導されることを明らかにし、これをanaphase catastropheと名付けた。CDK1/CDK2阻害によるanaphase catastropheの誘導は、過剰中心体を持たない正常細胞では回避され、がんに比較的に特異性を持つ治療戦略として期待できる。その分子メカニズムとして、中心体タンパクの一つであるCP110のリン酸化阻害を介することがわかった。興味深いことにCP110タンパクは KRASの活性化でユビキチン機構により不安定化し、そのためanaphase catastropheは特にKRAS変異のある肺癌細胞で誘導されやすい。anaphase catastropheの誘導は、肺癌のみならず膵癌や大腸癌、リンパ腫などでも確認された。本セミナーではanaphase catastropheについてこれまでにわかっている知見を紹介し、がん治療におけるこの機構の可能性を考察したい。

世話人: 〇北村 俊雄 (細胞療法分野)
 中西 真 (癌防御シグナル分野)