東京大学医科学研究所

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学友会セミナー

学友会セミナー:2018年5月28日

開催日時: 2018年5月28日 15:00 ~ 16:00
開催場所: 1号館地下B-1会議室
講師: 中島 やえ子
所属: 千葉大学大学院医学研究院細胞分子医学・特任助教
演題: ポリコーム抑制性複合体non-canonical PRC1.1の造血幹細胞分化における役割
概要:

ポリコーム抑制性複合体(PRC)はヒストン修飾を介して遺伝子発現を制御する因子であり、Pcgfファミリー(Pcgf1-6)を含むPRC1とEzh1/2を含むPRC2の2種類に大きく分けられる。PRC1はH2AK119ub1、PRC2はH3K27me3修飾をそれぞれ担い、ES細胞や組織幹細胞での機能解析が精力的に行なわれている。造血幹細胞においては、PcgfファミリーとしてPcgf4/Bmi1を含むPRC1.4 (canonical PRC1) が自己複製能の維持とB細胞分化の抑制を介した多分化能の維持に重要であることが明らかにされているが、Pcgf1/3/5/6を含むnon-canonical PRC1 (PRC1.1/1.3/1.5/1.6) に関してはこれまで詳細な解析は行われてこなかった。
そこで我々はPcgf1の造血特異的コンディショナルノックアウトマウスを用いて、造血細胞におけるPRC1.1の機能解析を試みた。Pcgf1欠損造血幹細胞は、自己複製能は保たれているものの、B細胞への分化能が減弱し骨髄球への分化能が増強していることが明らかになった。網羅的解析において、Pcgf1欠損造血幹・前駆細胞では骨髄球分化のマスター制御因子であるCebpaのH2AK119ub1修飾レベルの低下を伴う発現亢進が観察され、さらにはその標的遺伝子群の発現も上昇していることが明らかになった。これらの結果は、Pcgf1が骨髄球分化の抑制因子として機能することで造血幹・前駆細胞の多分化能・未分化性の維持を制御していることを示している。このPcgf1の機能はPcgf4/Bmi1では代償できないことから、造血幹細胞制御においてnon-canonical PRC1がcanonical PRC1とは異なる機能を有することが確認された。感染、炎症などに伴うemergency myelopoiesisにおけるPRC1.1の機能についても合わせて報告したい。

世話人: 〇武川 睦寛 (分子シグナル制御分野)
 岩間 厚志 (幹細胞分子医学分野)