東京大学医科学研究所

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学友会セミナー

学友会セミナー:2018年4月5日

開催日時: 2018年4月5日 17:00 ~ 18:00
開催場所: 1号館2階 2-3会議室
講師: チャリセ ルシュン
所属: 名古屋大学脳神経外科・客員研究員 JR東海 名古屋セントラル病院・副医長
演題: 脳腫瘍に対するキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法
概要:

キメラ抗原受容体(Chimeric antigen receptor, CAR)は腫瘍特異抗原に対する単鎖抗体とT-cell receptor (TCR)のシグナルドメインとを融合させた人工的なTCRであり、このCAR をT細胞上に発現させることによりMajor histocompatibility complex (MHC)に依存しない腫瘍特異的細胞障害性T細胞を大量に作製することが可能となる。血液がんに対しては、CAR-T細胞療法の有効性が証明され2017年に抗CD19 CAR-T細胞療法がFDA承認され、脳腫瘍を含むその他の悪性疾患に対してもその可能性が期待されている。我々はすでに膠芽腫関連抗原のEGFRvIIIやpodoplanin(PDPN)を認識するキメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞を構築し、動物モデルでの有効性、そして、免疫モデュレーターとの併用によってその効果を増強することを種々公表してきた。これをもとに、米国ではヒト化を行い、臨床治験も開始されている。PDPNは頭頚部、食道、肺、子宮頚 部の扁平上皮癌、精巣セミノーマ、悪性中皮腫など多くの癌腫に発現しており、星細胞系腫瘍 においては、悪性度に応じて発現が上昇する。しかしPDPNは腎細胞や正常リンパ管内皮などの正常細胞にも発現しているため、正常細胞が攻撃されることが懸念される。そこで我々はグリオーマ細胞で異常に糖鎖修飾されたPDPNをイムノーゲンとして作成された癌特異的モノクローナル抗体Cancer-specific mAb (CasMab)であるLpMab-2を利用したCAR遺伝子を人工合成し(Lp2-CAR)し、Lentiviral vectorによりT細胞に遺伝子導入した(Lp2-CAR-T-cell)。Lp2-CAR-T-cell の抗腫瘍効果を当施設で樹立したグリオーマ幹細胞株を用いて検証した。Lp2-CAR-T-cellはPDPN発現グリオーマに対して特異的に細胞障害性を認めた。また、このLp2-CAR-T-cellは正常PDPN発現細胞に対する細胞傷害性を示さず、PDPNが発現している癌細胞のみに効果を示す癌特異的CAR-T-cellである。この腫瘍特異性をその他の脳腫瘍においても応用できると考えられる。

世話人: 〇長村 文孝(先端医療開発推進分野)
 藤堂 具紀(先端がん治療分野)