東京大学医科学研究所

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学友会セミナー

学友会セミナー:2018年2月15日

開催日時: 2018年2月15日 10:00 ~ 11:00
開催場所: 総合研究棟2階 共用会議室
講師: 太田 翔
所属: Postdoctoral Researcher, Department of Microbiology, Immunology, and Molecular Genetics, University of California, Los Angeles
演題: マクロファージにおけるNF-κB活性化ダイナミクスのデコード・メカニズム
概要:

マクロファージは細胞外からの様々なシグナルを感受し、シグナル特異的な応答を示す。NF-κBはマクロファージで働く代表的なシグナル依存的転写因子の一つであるが、その活性はシグナル特異的な時間的ダイナミクスを示すことが知られている。しかしながら、NF-κB活性化ダイナミクスの違いがどのような分子機構によって認識・判別(デコード)され、細胞応答にどのような影響を及ぼすのかは不明であった。今回我々は、NF-κBの阻害因子IκB⍺の遺伝子欠損が、TNF⍺刺激により引き起こされるNF-κBの周期的活性化を阻害し、継続的活性化を引き起こすことを利用して研究を進めた。まず、次世代シーケンサーを用いたATAC-seq法によりクロマチン構造をゲノムワイドに解析した。その結果、NF-κBの継続的な活性化は周期的な活性化に比べて、新規にクロマチン構造を開く傾向が強いことが示唆された。また、エンハンサー領域をマークすることが知られるヒストン修飾の一つ、H3K4me1のゲノム上における分布、並びにRNA-seqによる遺伝子発現解析により、NF-κBの継続的活性化によって、特に潜在性エンハンサーと呼ばれる一群のエンハンサー領域のクロマチン構造が開かれることが明らかとなった。これらの結果は、NF-κBの活性化ダイナミクスが潜在性エンハンサー領域によってデコードされ、シグナル特異的な遺伝子発現応答が誘導されることを示唆する。更に興味深いことに、マクロファージにおいてNF-κBの活性化ダイナミクスが、潜在性エンハンサーの形成を介して自然免疫記憶の獲得を制御する可能性が示唆された。本研究結果はNF-κBによる遺伝子発現制御機構に新たな視点を与えるものである。

世話人: 〇吉田進昭 (発生工学研究分野)
 中西 真 (癌防御シグナル分野)