東京大学医科学研究所

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学友会セミナー

学友会セミナー:2018年1月30日

開催日時: 2018年1月30日 14:00 ~ 15:00
開催場所: 総合研究棟2階共用会議室
講師: 八木 正樹
所属: 京都大学iPS細胞研究所未来生命科学開拓部門・大学院生
演題: 配偶子に由来するDNAメチル化を維持した高品質なES細胞の樹立
概要:

マウスES細胞は血清およびLIF(白血病阻止因子)を含む培地(S/L培地)を用いて維持されてきたが、S/L培地で培養したES細胞はDNAメチル化状態が内部細胞塊と比して高いことが分かっている。近年MEK1/2阻害剤およびGsk3β阻害剤を加えること(2i/L培地)により効率良くES細胞を樹立・維持することが可能となった。しかしながら、2i/L培地で樹立・維持したES細胞のエピゲノム状態の安定性や、その品質については詳細に解析されていない。今回我々は、父方母方ゲノムの区別が可能なマウスの掛け合わせ(129/MSM)により得た胚盤胞から2i/L培地とS/L培地を用いてES細胞を樹立し、DNAメチル化解析を詳細に行った。2i/L-ES細胞はゲノム全域にわたりDNA低メチル化状態にあり、さらに、2i/L-ES細胞では受精後において維持されるべきインプリント領域のDNAメチル化も低下していた。また、インプリントを消失した2i/L-ES細胞からは核移植によるクローンマウス、四倍体補完法によるマウス個体が得られなかった。このことから、配偶子から引き継がれるインプリントは正常な個体の発生に重要であることが示唆された。最後に、MEK1/2阻害剤の濃度を低くする方法およびMEK1/2阻害剤をSrc阻害剤で代替する方法で樹立したES細胞はインプリントを保ち、高い個体発生能を有していることを明らかにした。本研究成果は、高品質なマウスおよびヒトの多能性幹細胞の樹立・維持へ応用できると期待される。

世話人: 〇吉田 進昭 (発生工学研究分野)
 中西 真 (癌防御シグナル分野)