東京大学医科学研究所

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学友会セミナー

学友会セミナー:2017年11月8日

開催日時: 2017年11月8日 16:30 ~ 17:00
開催場所: 2号館2階小講義室
講師: 佐藤 晶論
所属: 福島県立医科大学 医学部 小児科講座(講師)
演題: インフルエンザの臨床と研究:小児科臨床医からの観点
概要:

私が医師になった1990年代後半には、ノイラミニダーゼ(NA)阻害薬はなく、冬の小児科病棟はインフルエンザ入院患者であふれていた。しかし、2002年に上市されたオセルタミビルのドライシロップ製剤は、小児科におけるインフルエンザ診療を劇的に変化させ、インフルエンザで入院を要する児は激減した。
私が、インフルエンザの臨床研究に携わるようになったのは、オセルタミビルのドライシロップ製剤が上市された2002年で、当初はNA阻害薬投与によりウイルス排泄期間が非投薬例よりも短縮されるだろうと予想し、A型もしくはB型インフルエンザ入院患者を対象に、連日鼻汁を採取しウイルス排泄期間を検討した。薬剤非投与群と比較しNA阻害薬投与群では約20時間有熱期間は短縮するが、感染性ウイルスの排泄期間は有意に短縮することは出来なかった。この結果に基づいて、未就学児の登園停止期間が現在のものに改正されたことは、感慨深い。さらに、連日採取・保存した鼻汁を用いて、経時的に薬剤耐性ウイルスの検出を試みたところ、薬剤投与4日目以降で感受性が低下するウイルスが検出されやすい傾向があることも確認された。
 2010年に上市されたペラミビルは唯一の静注NA阻害薬であり、小児でも1日1回、単回投与で治療が完了するとのことで話題となった。そこで、私は経時的なウイルス量と薬剤感受性の推移を検討し、さらに、血中および気道中のペラミビル濃度についても検討した。すると、投与2日後にはA型のウイルス量は投与前の0.1%以下になるが、気道中からペラミビルが排泄された投与3日後から薬剤感受性は変化しないもののウイルス量が増加することを確認し発表した。これは、小児では免疫応答が未熟であるため、急性期のウイルス量のコントロールは抗ウイルス薬に依存するためと考えている。
また、ペラミビルに関する臨床研究では、連日採取した血清を用いて、AH3亜型分離株に対する赤血球凝集反応抑制試験を行ったところ、血清中のペラミビル濃度に比例して赤血球凝集反応が阻害されたことから、近年のAH3亜型ウイルスの赤血球への吸着にはノイラミニダーゼが大きく寄与しているのではないかとの発想をえた。
本セミナーでは、私のような一小児科臨床医がどのようにインフルエンザの臨床研究に携わってきたか、また、臨床研究を進める上での課題と限界について述べたい。さらに、インフルエンザの臨床について、現在、多くの若手小児科医が抱いている印象と問題点についても触れたい。

世話人: 〇河岡 義裕 (ウイルス感染分野)
  川口 寧 (ウイルス病態制御分野)