東京大学医科学研究所

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学友会セミナー

学友会セミナー:2017年10月27日

開催日時: 2017年10月27日 14:00 ~ 15:00
開催場所: 総合研究棟2階会議室
講師: 佐藤 宏樹
所属: 実験動物研究施設・特任助教
演題: モービリウイルス感染後の宿主転写制御ネットワーク構築
概要:

モービリウイルス属は、人のはしかの原因となる麻疹ウイルスをはじめ牛疫ウイルスやイヌジステンパーウイルスなどを含み、それぞれの自然宿主に対して高い感染力と一過性の激しい免疫抑制など共通の特徴的な強い病原性を示す。in vitroにおいては細胞種によって感染後に異なる反応を引き起こすことが報告されており、特に我々は上皮系細胞で誘導される様々な宿主応答が血球系細胞では抑制されることを報告していたが、その全体像は不明であった。そこでこれら2種の細胞株でモービリウイルス感染後のマイクロアレイ解析を行い、上皮系細胞では抗ウイルス応答をはじめとする遺伝子発現上昇に加え、ハウスキーピング遺伝子群の発現が広範に低下する現象を見いだした。一方で、血球系細胞ではこれら変動がほぼ抑制され、さらにウイルスアクセサリー蛋白の一つを欠損した組換えウイルスの感染により上皮系細胞で見られた広範な遺伝子発現低下が誘導されることを明らかにした。このことは、ハウスキーピング遺伝子群の発現低下は宿主側の抗ウイルス戦略の一つであり、一方モービリウイルスは血球系細胞においてアクセサリー蛋白単体でこの宿主応答を抑制する活性をもつことを示唆する。そこで感染後の広範な発現低下を引き起こす宿主転写制御機構を明らかにするために、近年開発されたCAGE法(cap analysis gene expression)とMARA解析(motif activity response analysis)を組み合わせ、感染後の転写因子ネットワークの経時的な活性変動の動態を解析した。得られた結果に対する一連の評価試験はほぼすべて転写活性の変動を再現し、この技術の組み合わせが様々な転写因子ネットワークの構築に有用であることを示した。
本セミナーではこの結果を中心に、感染後の宿主転写変動と翻訳後修飾の関連およびウイルスの増殖調節機構に関する新たな知見についても紹介する。

世話人: 〇吉田 進昭(発生工学研究分野)
  三宅 健介(感染遺伝学分野)