東京大学医科学研究所

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学友会セミナー

学友会セミナー:2015年8月31日

開催日時: 2015年8月31日 14:00-15:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 総合研究棟 8階 大セミナー室
講師: 吉田 亮
所属: 大学共同利用法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所・准教授
演題: ライフサイエンス分野における統計科学の先進応用
概要:

我々は、ベイズ統計学や機械学習を方法論の基軸に、ライフサイエンスの様々な問題に取り組んでいます。本講演では、下記研究に基づき、データサイエンスの活用事例を紹介します。
有機化合物のデータ駆動型分子設計:薬剤設計は、約1060個の候補化合物からなる広大な化学空間から、薬に必要な機能を併せ持つ化学構造を探索する作業です。本研究の目的は、ベイズ統計と量子化学計算を基盤とする分子設計手法の開発です。(a)データに基づき化学構造から性質(物性や薬理活性)のフォーワード予測モデルを構築し、(b)フォーワードモデルをベイズ則で反転し、性質から構造のバックワード予測を導き、所望の性質を有する埋蔵分子を発掘します。
神経科学とバイオイメージインフォマティクス:線虫の神経系は、302個のニューロンから構成され、全シナプス結合の配線図が明らかになっています。我々は、生きた線虫の全中枢神経系をまるごと計測するバイオイメージングの新しい手法を開発しています。これにより、生きた線虫の神経系のシステム応答を直接観察できるようになり、神経回路の動作原理についていくつかの新しい事実が明らかになってきました。共焦点顕微鏡の立体動画からニューロンの活動状態を推定するには、物体認識・追跡に関する高度なデータ解析技術が必要不可欠です。
RNAシーケンスに基づく転写伸長速度の網羅的予測:研究の目的は、Total RNA-seqを用いて転写伸長の相対速度を推定することです。RNA ポリメラーゼ(PolⅡ)の伸長過程で、段階的にスプライシングが起こります。データは、プロセシングの様々な段階にある転写産物の状態を捉えたものです。これにより、リード分布には、PolⅡの伸長方向に沿った減少勾配とエクソン領域の突起(鋸刃のパターン)が形成されます。このことは、リード分布の勾配変化からPolⅡの伸長速度を推定できる可能性を示唆します。ベイズ法で転写伸長プロセスの逆問題を解き、鋸刃のパターンから速度分布を再構成することで、ゲノム全域の転写伸長の速度分布を予測します。

世話人: ○中井 謙太(機能解析イン・シリコ分野・教授)
 井元 清哉(健康医療データサイエンス分野・教授)
 宮野 悟(DNA情報解析分野・教授)