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異種細胞間相互作用を媒介する接着分子CADM1/TSLC1

学友会セミナー

学友会セミナー:2008年01月11日

開催日時: 2008年01月11日 15:00~16:00
開催場所: 2号館2階小講義室
講師: 伊藤 彰彦
所属: 神戸大学大学院医学系研究科 病理学分野
演題: 異種細胞間相互作用を媒介する接着分子CADM1/TSLC1
:実験病理学的アプローチ
概要:

細胞膜蛋白質を介した異種細胞間相互作用は、細胞の増殖・分化・運動・活性化を制御する点で重要な生命現象である。例えば、間質細胞と相互作用することで癌細胞は浸潤・転移し、血液細胞は増殖・分化・遊走する。演者はサブトラクション法を用いることによりこの二つの現象に関わる遺伝子を新たに単離する実験に取り組んで、これまでに異種細胞間で働く分子を数種同定し、その機能をマウス転移モデルやマスト細胞欠損マウスにおいて明らかにしてきた。癌の転移に関しては、メラノーマ細胞がある種のコネキシンを高発現することで血管内皮細胞との間にギャップ結合を形成し、その能力が転移能を規定することを示した。一方、マスト細胞は免疫グロブリンスーパーファミリー接着分子で、癌抑制遺伝子としても機能するCell Adhesion Molecule-1(CADM1)/TSLC1 を発現することにより線維芽細胞に接着し、この接着が線維芽細胞上の膜結合型Stem cell factorとマスト細胞上のc-kit受容体との間のシグナル伝達を支持することによりマスト細胞は生存できることを明らかにした。演者は次いで、組織病理学的な知見に基づいてCADM1研究を他の細胞種にも広げ、最近では特に、種々の疾患・病態との関連が知られる神経-マスト細胞相互作用や神経-膵島細胞相互作用における本分子の機能的意義に注目して研究を展開している。その結果、CADM1は神経原性炎症の増悪や膵島細胞腫瘍のホルモン機能性にも寄与することが新たに明らかになってきた。本セミナーでは、異種細胞間の相互作用を分子レベルで理解するために、実験病理学的な個体レベルでのアプローチが有用であることをご紹介したい。

世話人: ○村上善則、山本雅