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HIV-1の種トロピズム:種間バリアーを回避するサル指向性ウイルスの構築

学友会セミナー

学友会セミナー:2007年12月20日

開催日時: 2007年12月20日 17:30 ~ 18:30
開催場所: 2号館 2階 小講義室
講師: 足立 昭夫 教授
所属: 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部ウイルス病原学分野
演題: HIV-1の種トロピズム:種間バリアーを回避するサル指向性ウイルスの構築
概要:

HIV-1は宿主域が非常に狭く、感染するのはヒトとチンパンジーのみであり、チンパンジーは通常エイズを発症しない。したがって、ヒトのみが発症を伴うHIV-1の自然宿主である。一方、HIV-1に近縁のアカゲザル由来免疫不全ウイルス(SIVmac)は、ヒト細胞に感染するだけでなく実験用マカクザル類にも感染・発症させるなど宿主域が広い。このウイルス学的性格から、SIVmacはHIV-1のモデルウイルスとしてマカクザルへの感染実験に盛んに使用され大きな成果をあげてきた。しかし、SIVmacとHIV-1は各遺伝子のホモロジーが低いだけでなくゲノムの遺伝子構成が明確に異なる。さらに、ウイルス学的性状にも異なるところがある。そこで、これまでに、SIVmacとHIV-1間で様々なキメラウイルス(SHIV)が作製され、ウイルストロピズムの責任領域を決定するなどの基礎研究とともに、病原性発現機構の解明やワクチン開発などを目指したマカクザルへの感染実験が行なわれてきた。SHIVのサル細胞での増殖能から、トロピズムのウイルスゲノム内責任領域の一つはgag遺伝子であることが明らかにされた。最近、強力な抗HIV-1細胞因子としてAPOBEC3GとTRIM5αとが報告された。サル細胞に存在するこれらの因子がHIV-1複製を阻害している可能性を考え、演者らはvif遺伝子とgag遺伝子の一部とをSIVmac型にしたHIV-1を構築した。サル細胞での馴化を経て得られたウイルスはゲノムの約93%がHIV-1で、かつ、サル細胞およびサル個体で複製・増殖した。しかしながら、SIVmacと比較すると増殖効率は悪く、まだ完全にはサル細胞に存在する何らかの抗ウイルス因子の抑制効果を回避できていないことが示された。現在、このウイルス増殖抑制に関わる細胞およびウイルス側要因について詳細に解析している。

世話人: ○渡邉俊樹(MGS)・俣野哲朗(医科研)