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病原体の進化を数理モデルで解く

学友会セミナー

学友会セミナー:2007年11月26日

開催日時: 2007年11月26日 13:00 ~ 14:00
開催場所: 医科学研究所 2号館2階 小講義室
講師: 佐々木 顕
所属: 総合研究大学院大学(葉山高等研究センター)・教授
演題: 病原体の進化を数理モデルで解く
概要:

佐々木先生は、病原体とホストの相互作用の理論解析で世界をリードしている研究者です。九大(数理生物)から葉山に赴任した機会に、非専門家にもわかりやすく話して頂きます。
 エイズウイルスや睡眠病の病原体トリパノソーマは、宿主に感染したのちに表面抗原を次々と「脱ぎ変える」という巧妙な戦略によって、免疫系の攻撃から逃れます。このような病原体の流行と進化を予測するために、感染個体のなかでのウイルスの表面抗原の進化と免疫応答の数理モデル化が必要になります。またインフルエンザの抗原連続変異や最近話題になっているHA抗原の断続的進化、組み換えによるパンデミックの起きる条件なども、宿主集団免疫構造の時間変化と抗原遺伝子の配列空間上の進化経路を理論的に探ることなしには理解できないでしょう。私たちはこのような病原体の巧妙な進化を、宿主との免疫学的相互作用、系統樹の分岐動態、さらに個体群生態学や集団遺伝学の手法と組み合わせることで理論的に研究しています。
 このような数理モデルを使った研究の例として、バクテリアとファージの制限修飾酵素認識配列をめぐる共進化、ワクチン由来強毒変異株や薬剤耐性の進化、宿主空間ネットワークと病原体の毒性の進化、いもち病菌とイネ抵抗性の軍拡競争、デング熱ウイルス抗原型共存、インフルエンザの流行と進化のパターンなどについての最近の成果を報告します。

世話人: ○小林一三 , 中川一路