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癌細胞の増殖の分子基盤にもとづくNF-κB阻害剤による分子標的療法の開発

学友会セミナー

学友会セミナー:2007年11月20日

開催日時: 2007年11月20日 17:30~18:30
開催場所: 2号館大講義室
講師: 堀江良一
所属: 北里大学医学部血液内科学・准教授
演題: 癌細胞の増殖の分子基盤にもとづくNF-κB阻害剤による分子標的療法の開発
概要:

癌細胞は癌遺伝子、癌抑制遺伝子の異常が蓄積し成立している。しかし慢性骨髄性白血病 (CML) や急性前骨髄球性白血病 (APL) に対する分子標的療法の成功は、実際の癌細胞の増殖や分化停止に関わる、いわゆるメインエンジンに相当するものは比較的単純であることを示唆した。このことは最近 ”oncogene addiction”という概念によって広く受け入れられるようになってきている。分子生物学的アプローチによる分子基盤の理解、病理学的疾患概念の再構成は治療における分子標的を正しく認識することを可能とする。
未分化大細胞型リンパ腫 (ALCL)はHodgkin リンパ腫(HL) 同様、CD30の過剰発現を共通の特徴とした悪性リンパ腫である。ALCLとHLとの病理学的分類上の境界は明確ではなく、さらに亜系内の分類も加わって、現在に至っても議論の対象となっている。本セミナーではCD30過剰発現リンパ腫をモデルとして分子生物学的アプローチによる分子基盤の理解、病理学的疾患概念の再構成を示し, CD30過剰発現リンパ腫がanaplastic lymphoma kinase (ALK)とnuclear factor κB (NF-κB)を分子基盤とする群に分かれること解説する。
NF-κBは癌化や癌細胞の増殖、生存に重要な働きをしていることが明らかになっている。したがってNF-κBは重要な分子標的の一つと考えられている。dehydroxymethylepoxyquinomicin (DHMEQ)は放線菌Amicolatopsis sp.から得られたエポキシキノミシンCの誘導体として合成されたNF-κB阻害剤である。DHMEQは臨床応用を目指してトランスレーショナルリサーチが進められているが、本セミナーではNF-κBの強い恒常的活性化を共通の分子基盤とする疾患群であるHL、成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATL)、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)への有用性を示唆する基礎的データを示す。さらにATLにおいてDHMEQはHTLV-1キャリアからの感染細胞の除去に有用と考えられ、癌の化学予防(chemoprevention)という視点からのアプローチも紹介する。

世話人: ○山下直秀 , 渡邉 俊樹