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RNA編集によるエピジェネティックな制御機構;microRNA機能から精神活動まで

学友会セミナー

学友会セミナー:2007年11月27日

開催日時: 2007年11月27日 17:00 ~ 18:00
開催場所: 2号館2階小講義室
講師: 河原 行郎 博士
所属: The Wistar Institute(ペンシルヴェニア州フィラデルフィア)
演題: RNA編集によるエピジェネティックな制御機構;microRNA機能から精神活動まで
概要:

二重鎖RNA中のアデノシンをイノシンへと置換するRNA編集は、線虫から哺乳類まで幅広く保存された転写後修飾の一種である。RNA編集によってアミノ酸配列が置換する場合もあるが、ほとんどの標的は、非翻訳領域やnon-coding RNA中にあり、その生理的意義の多くは不明である。
今回の講演では、non-coding RNAの中でも最近注目を集めているmicroRNAと、coding RNAを代表してセロトニン5-HT2C受容体に生じるRNA編集、それぞれの意義について、最近得た知見を紹介する。
microRNAは20塩基前後のsmall RNAで、主に標的遺伝子の非翻訳領域へと結合し、その発現量を調節している。臓器形成に必須であるばかりでなく、ガンをはじめとする様々な病気と関連している可能性が示唆されつつある。最近我々は、多数のmicroRNAがその生成過程でRNA編集を受けることを発見した。microRNAによって、発現量が調節されているケースや、或いは編集型microRNAが発現することによって、未編集型とは異なる遺伝子をターゲットしているケースもあり、microRNAの機能は、RNA編集を介してより多面的に制御されていることが明らかとなった。
一方、5-HT2C受容体に生じるRNA編集は、10年以上前に発見されていたが、これによって生じるアミノ酸配列の置換が持つ意義は不明であった。このため、我々は常に未編集型受容体だけ、或いは完全編集型受容体だけが発現する、二つのノックインマウスを作成した。このうち、完全編集型受容体発現マウスは、生後著しいエネルギー代謝の亢進により、痩せた表現型を呈した。さらにこのマウスは、明らかな精神的異常も来すことが分かった。
RNA編集は、将来microRNAを用いた診断・治療を念頭においた場合、重要な鍵となることが予想され、さらに肥満や精神疾患などの治療ターゲットとしても利用できる可能性がある。

世話人: ○井上 純一郎、中村 義一