東京大学医科学研究所

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学友会セミナー

学友会セミナー:2012年10月31日

開催日時: 2012年10月31日 17:15-18:30
開催場所: 1号館2階セミナー室
講師: 今井眞一郎 准教授
所属: ワシントン大学医学部発生生物学部門・医学部門
演題: "Productive Agingの実現にむけた老化・寿命制御の理解—視床下部と脂肪組織におけるNAMPT/NAD/SIRT1の重要性とNADワールド(GCOE医科学教育セミナー)
-Understanding the mechanism of mammalian aging and longevity to achieve"Productive Aging" - The importance of NAMPT/NAD/SIRT1 in the hypothalamus and adipose tissue and the NAD World" (held in Japanese)
概要:

過去約10年ほどの間に、進化的に保存されている様々な老化・寿命の制御因子、シグナル伝達系が同定され、各モデル生物において、老化・寿命の制御メカニズムを理解していくための重要な鍵を提供してきた。しかしながら、哺乳類においては、多くの臓器・組織が複雑かつ階層的な相互作用を持ち、全身性に老化・寿命を制御するメカニズムを解き明かしていくのは容易ではない。我々の研究室では、この難問に臨むにあたり、次の3つの疑問を設定した。1)哺乳類では、老化・寿命の制御を司る主要な臓器・組織が存在するのか? 2)そのような老化・寿命の「コントロールセンター」とも呼ぶべき臓器・組織は、どのように他の臓器・組織とコミュニケーションをとって老化・寿命の制御を行っているのか? 3)どのようなシグナル伝達系、制御因子がそのような全身性のコミュニケーションを統御しているのか? 我々はこの3つの疑問に答えていくために、様々な代謝応答の制御を司る哺乳類NAD依存性蛋白脱アセチル化酵素SIRT1、およびそのSIRT1の活性制御に重要なnicotinamide phosphoribosyltransferase (NAMPT)によるNAD合成系からなる、全身性の代謝・老化・寿命制御システム(NADワールド)のダイナミクスに焦点をあてて研究を進めている。
 最近、brain-specific SIRT1-overexpressing (BRASTO) transgenic miceの解析から、視床下部の特定の領域、すなわちdorsomedial hypothalamus (DMH)およびlateral hypothalamus (LH)が哺乳類における老化・寿命の制御に重要であることを示唆する知見を得た。DMH・LHにおけるSIRT1はオレキシンシグナル伝達系を制御することにより、おそらく交感神経系を介して、骨格筋の構造と機能を保っている。SIRT1はこの制御システムを通して、老化による種々の機能低下を抑制し、寿命を延長させるように働いていると考えられる。一方、脂肪組織では、SIRT1は細胞外型NAMPT(eNAMPT)の分泌制御に重要な役割を果たしていることが明らかになっており、eNAMPTは視床下部の機能制御に関わっていることを示唆する結果が得られつつある。これらの結果から我々は、視床下部(特にDMH•LH)が高次の老化・寿命の「コントロールセンター」の一つとして働いているとともに、脂肪組織はその視床下部機能のモジュレーターとして老化・寿命の制御に関わっている可能性を検討している。本講演では、これらの最新の知見を御紹介するとともに、全身性老化・寿命制御システムの理解に基づいた抗老化方法論の可能性についても論じてみたい。

世話人: ○渡邉すみ子 再生基礎医科学寄付研究部門
今井浩三 医科学研究所附属病院病院長