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がん表現型解析および創薬における発現マイクロアレイの応用

学友会セミナー

学友会セミナー:2007年10月11日

開催日時: 2007年10月11日 11:00~12:00
開催場所: アムジェンホール大会議室
講師: 森 誠一
所属: Duke University Institute for Genome Sciences and Policy
演題: がん表現型解析および創薬における発現マイクロアレイの応用
概要:

がんは症例ごとに多彩な病態を呈するため、オーダーメード医療の実現が不可欠であり、治療対象と治療法の適切な選択は重要な課題である。我々は発現マイクロアレイと薬理データベースを組み合わせることによりこれに取り組んできた。本セミナーではその成果を下記プロジェクトについて述べる。
1) Em-mycトランスジェニックマウスリンパ腫は80%が半年以内に発症する一方で、20%が1-2年かけてゆっくりと発症する。遺伝子発現パターンとがん遺伝子活性予測から、早期発症と晩期発症のリンパ腫はそれぞれヒトバーキットリンパ腫 (BL)、diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL)に類似すること、早期発症リンパ腫/BLではMyc, E2F, PI3K活性が高く、晩期発症リンパ腫/DLBCLではNF-kB活性が高いこと、さらにDLBCLにおいて、特異ながん遺伝子活性パターンを示す予後不良のグループが存在することを明らかにした。この結果はがん遺伝子活性予測の診療への応用とEm-mycマウスモデルの有用性を示している。
2) 抗がん剤は従来、細胞傷害性あるいは分子標的に基づいて探索されてきた。
近年、がん細胞表現型に基づいた薬剤探索が行われるようになったが、その方法論はまだ発展途上である。我々は、がんの表現型を遺伝子発現署名として抽出し、コンピュータ上で薬理学データに変換することで、表現型特異的な治療薬を同定する方法論を開発した。基底細胞型乳がん選択的化合物としてHMG-CoA synthetase阻害剤であるスタチンを同定し、試験管内で実際の特異性を確認した。さらに足場非依存性細胞特異的化合物も複数同定、確認した。この方法はあらゆる表現型について応用可能であるのみならず、相関を示す化合物の薬理作用から表現型の生物学的意義を類推するのに有用であると考える。

世話人: ○古川洋一、清木元治