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グルタミン酸受容体の局在と機能

学友会セミナー

学友会セミナー:2007年09月25日

開催日時: 2007年09月25日 16:00 ~ 17:00
開催場所: アムジェンホール2階大会議室
講師: 重本 隆一
所属: 大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 生理学研究所
演題: グルタミン酸受容体の局在と機能
概要:

グルタミン酸は哺乳動物の中枢神経系における主要な興奮性伝達物質である。神経細胞の接合点であるシナプスでは、シナプス前部および後部において各種のグルタミン酸受容体が異なる細胞膜ドメインに局在している。本日は、このうち通常の速いシナプス後電位を引き起こすAMPA型受容体と記憶形成や回路発達、神経細胞死に重要な働きをするNMDA型受容体の局在と機能について、最近の結果を紹介したい。
我々の部門では個々のシナプスレベルでこれらの受容体の数と密度を計測できる技術として、藤本の発明したSDS凍結割断免疫レプリカ法を改良して用いている。この方法を用いれば、電子顕微鏡レベルで単一シナプスに存在するAMPA型受容体一チャネルをおよそ一個の金粒子で検出することが可能である。まず、単純な小脳運動学習モデルであるマウスの水平性視機性眼球反応の適応現象を用いて、短期学習と長期学習における後シナプス部位に存在するAMPA型受容体の数の変化を調べた。この結果、短期学習では、平行線維-プルキンエ細胞シナプスにおけるAMPA型受容体の密度が減少するのに対し、長期学習の成立したマウスにおいては、受容体密度は変化せず、シナプス密度が減少することを見出した。さらにこの長期学習が短期学習の成立には依存しないで起こることが明らかになった。以上の結果は短期学習と長期学習が異なるメカニズムで生じていることを示している。
次に、海馬におけるグルタミン酸受容体とシナプスの非対称性について紹介する。我々はNMDA型受容体サブユニットNR2Bが左右の海馬で非対称に配置していることを発見した。さらに最近、AMPA型受容体GluR1がこれとは逆の非対称性をもつこと、およびNR2B優位シナプスとGluR1優位シナプスでは、形態やサイズが異なることを発見した。この非対称性がどのような生理的意義を持っているかを調べるため、左右の脳を分断したマウスを使って空間学習課題を行ったところ、より大型のスパインとGluR1優位シナプスを放射状層に持つ右側海馬を使う動物で、空間学習がより起こりやすいことが明らかになった。

世話人: ○真鍋俊也、中村義一