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細胞周期からの脱出と再進入:ユビキチンリガーゼによる制御機構

学友会セミナー

学友会セミナー:2007年09月26日

開催日時: 2007年09月26日 10:00~11:00
開催場所: 一号館2階 会議室
講師: 中山 敬一博士
所属: 九州大学 生体防御医学研究所
演題: 細胞周期からの脱出と再進入:ユビキチンリガーゼによる制御機構
概要:

細胞は常に増殖しているのではない。私達の体の大部分の細胞は増殖せずに静止しており、この時期をG0期と呼ぶ。細胞周期からG0期への脱出と、G0期から細胞周期への再進入のメカニズムはほとんど明らかになっていないが、癌細胞においてはG0期への脱出に障害があり、一方で神経細胞や心筋細胞ではG0期から細胞周期への再進入が起こらない(再生能力がない)ことが知られている。われわれはG0期制御にSCF複合体型ユビキチンリガーゼであるSCF/Skp2とSCF/Fbw7が重要な役割を果たしていることを発見した。Skp2は細胞周期のブレーキ役であるp27などのCDKインヒビターを分解することによって細胞周期を促進させ、逆にFbw7は細胞周期のアクセル役であるc-MycやサイクリンEなどを分解することによって細胞周期を停止させる。Fbw7は細胞をG0期に維持することによって幹細胞の機能にも必須の役割を果たす。またわれわれはG0期から分化へ向かう経路にもユビキチンリガーゼE4Bが関与していることを突き止めた。E4Bと複合体を作る分子群の一つProtrudinは、細胞内小胞の輸送方向の決定に関わる分子であり、神経分化にとって必須の因子であることが示された。このように細胞の運命決定の分岐点であるG0期を中心としてユビキチンリガーゼが織りなす世界を、マウスモデルを交えながらお話ししたい。

世話人: ○斎藤春雄、 井上純一郎