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糖鎖異常とヒト疾患

学友会セミナー

学友会セミナー:2007年06月29日

開催日時: 2007年06月29日  17:00~18:00
開催場所: 白金ホール会議室
講師: 浅野 雅秀 博士
所属: 金沢大学学際科学実験センター
演題: 糖鎖異常とヒト疾患
概要:

糖鎖はタンパク質の活性発現や安定性,輸送,クリアランスなどに重要である共に,細胞表面の糖鎖は細胞と細胞あるいは細胞と細胞外基質との相互作用に必須の役割を果たしている。近年,糖鎖の異常が様々なヒト疾患の原因となっていることがわかりつつあり,筋ジストロフィーや腫瘍細胞の浸潤・転移,インフルエンザをはじめとした感染症などで注目をされている。我々の研究室では糖転移酵素遺伝子の改変マウスを作成して糖鎖構造をリモデリングすることにより,生体内での糖鎖機能を解析している。その過程でガラクトースの転移酵素遺伝子欠損マウスが,ヒトIgA腎症様病態を発症することを見いだした。
 IgA腎症は,アジア太平洋地域と南ヨーロッパに多くの患者が報告されており,我が国では慢性糸球体腎炎の約半数を占める代表的な腎疾患である。20歳代をピークに子供から大人まで幅広い年代で発症し,進行は緩慢であるが,20年の歳月を経て,約40%の患者が人工透析や腎臓移植を必要とする腎不全に陥る予後不良の難治性疾患である。血中のIgAを主体とする免疫複合体が腎糸球体のメサンギウム領域に沈着することが原因であると考えられるが,発症の分子機構はよくわかっていない。O型糖鎖不全のIgA1がIgA沈着の原因であるとの説が提唱されており,我々のマウスがIgA腎症の解明に貢献する可能性について議論する。
 また,シアル酸の合成酵素遺伝子の点変異が遺伝性の筋疾患の一つである縁取り空砲遠位型ミオパチー(DMRV)の原因であることが報告された。我々は日本人患者と同じ点変異を持ったマウスを作成し,その病態の解析と疾患モデルマウスとしての可能性を解析している。

世話人: ○岩倉洋一郎、吉田 進昭