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がん治療へ、siRNA医薬への期待

学友会セミナー

学友会セミナー:2007年6月15日

開催日時: 2007年6月15日 16:00~17:00
開催場所: アムジェンホール大会議室
講師: 古市康宏
所属: ジーンケア研究所
演題: がん治療へ、siRNA医薬への期待
概要:

昨年ノーベル生理学医学賞を受賞した「RNA干渉の発見」は、細胞生物学の理解に大きな波及効果を示すと共に、新しいタイプの医薬品を生み出す原動力になろうとしている。一時代前のPCR技術の発見が、ゲノム時代の到来を招き、新しい遺伝子の発見や発現メカニズムの解明に大活躍したことは周知のことである。 RNA干渉も、非常に短期間のうちに、遺伝子の働きをより如実に知るためには欠かせない研究技術となった。加えて、この現象の主役でもある21mer程度(分子量約1.3万ダルトン)の小さな二本鎖RNAが、以下に述べるような素晴らしい特徴を備えた医薬品になることがわかり、21世紀の「夢の新薬」ともなろうとしている。
(1)創薬ターゲットを見出すための、簡便で、最高のツールとして使えること、
(2)デザインしたsiRNAを細胞内へ導入すれば、厳密な特異性を発揮して遺伝子発現を抑制し、メカニズムがわかる形で薬効を発揮すること、
(3)siRNAは細胞質で働くため、核内ゲノムへの飛込みなどが無く、アンチセンスや遺伝子治療などDNA医薬品では危惧されているリスクが無いこと、
(4)siRNAは、分子量は小さく、形状も一定で、一旦DDSが決まれば、製剤化は容易であり、将来的には複数種のsiRNAの製剤化も夢ではないのであり、
(5)触媒的に働くため、極微量で薬効が期待でき、細胞内では1週間程度で分解されて天然型ヌクレオチドへ戻るなど、代謝物が安全である、
(6)従来、創薬ターゲットにならなかった遺伝子もsiRNA医薬では、良いターゲットになりうる。
 演者のグループは、ゲノム修復に関与しているRecQヘリカーゼファミリーの発現をRNAiにより抑制すると、癌細胞選択的に効率よく細胞死を誘導することを見出してきた。講演では、RecQヘリカーゼとsiRNAを組み合わせた「夢のsiRNA抗癌剤」の開発に向けて、背景、R&D戦略、展望などについてお話しいただく予定です。

世話人: ○北村俊雄、中村義一