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神経シナプスactive zone形成の分子メカニズム ~Molecular anatomy of the presynaptic active zone~

学友会セミナー

学友会セミナー

2003年開催 学友会セミナー

開催日時: 平成15年10月10日(金) 17:00~18:30
開催場所: クレストホール会議室
講  師: 大塚 稔久 先生
所  属: (株)カン研究所
演  題: 神経シナプスactive zone形成の分子メカニズム
 ~Molecular anatomy of the presynaptic active zone~
概  要:

複雑な神経回路網の基本ユニットであるシナプス結合は大きく3つの領域に分けることができる。プレシナプス、シナプス間隙(synaptic cleft)、そしてポストシナプスである。この10年来の研究によって、ポストシナプス、とりわけpostsynaptic density (PSD)の構成分子が数多く明らかとなり、PSDを基盤としたシグナル伝達のメカニズムの理解が急速に進んできたことは周知のとおりである。また、プレシナプス領域においては、神経伝達物質の放出機構が SNARE仮説などを中心に分子レベルで明らかにされてきた。しかしながら、その特異的な"神経伝達物質の放出の場"であるプレシナプス"active zone"の構造とその形成機構については依然不明な点が数多く残されている。プレシナプスのactive zoneを構成するcytomatrix at the active zone (CAZ)には、RIM1, Munc13-1, PiccoloおよびBassoonなどの細胞骨格蛋白質が存在し、active zoneの形成、構造維持および機能発現に重要な役割を果たしていると考えられてきた。最近、私共は、ラット大脳より今ひとつのCAZ蛋白質CAST(CAZ-associated structural protein)を同定しその機能解析を行ってきた。 CASTは957のアミノ酸からなり、複数のcoiled-coil領域と、C末にはPDZドメイン結合モチーフである3つのアミノ酸(IWA)を有している。CASTは、そのC末でRIM1に直接結合しかつRIM1を介してMunc13-1と結合して3者複合体を形成する。 RIM1とMunc13-1はカルシウム依存性の神経伝達物質の放出を制御するCAZ蛋白質である。また、CASTはC末(IWA)を欠失してもシナプスに局在するが、RIM1はPDZドメインを欠失するとシナプスへの濃縮パターンがみられなくなる。これらのことから、 CASTがRIM1のactive zoneにおけるanchoring蛋白質であることが示唆された。さらに、最近私共は、CASTとRIM1の結合を阻害することでneurotransmissionが抑制されることを見出した。さらに、Bassoonもこの3者複合体に直接もしくは間接的に結合することをすでに明らかにしており、CAZにおいて、 CAZ蛋白質間の蛋白質-蛋白質相互作用のネットワークが存在し、この巨大な複合体が比較的電子密度の高いCAZの分子基盤ではないかと私共は考えている。本セミナーではCASTに関連した最新のデータを中心に、これまで不明であったCAZ蛋白質間の分子間相互作用とneurotransmissionにおけるその役割について話題を提供したい。

世 話 人: 山本 雅、○真鍋 俊也