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核内レセプターによる遺伝子発現制御機構  - coactivator と corepressor の分子レベルの作用機構と生理作用

学友会セミナー

学友会セミナー

2001年開催 学友会セミナー

開催日時: 2001年10月4日(木)16:00 ~ 17:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 アムジェンホール大会議室
講  師: 黒川 理樹 博士
所  属: Associate Project Scientist
Department of Cellular and Molecular Medicine
University of California, San Diego
演  題: 核内レセプターによる遺伝子発現制御機構 
- coactivator と corepressor の分子レベルの作用機構と生理作用
概  要:

核内レセプター (NR)は多くの組織・細胞に広範な生理作用を示す転写因子である。レチノイン酸や甲状腺ホルモン・レセプター (RAR, TR)などのNRは、その脂溶性リガンド非結合状態で転写抑制、リガンド結合状態で促進作用を発揮する。これらレセプターの転写制御機構には、coactivator (CoA)およびcorepressor (CoR)と呼ばれる分子群(coregulator)の協同作用が必要である。CoA はヒストンアセチラーゼ活性を有し、CoRは逆反応を触媒するヒストン脱アセチラーゼと会合することが示された。すなわち、coregulatorは、これらの酵素活性によりクロマチン構造の変換を調節し、転写を正負に制御するものと考えられる。さらに、主要なCoAであるCBPおよびNCoR/SMRTなどの CoRは、複数の構成因子から成る複合体として存在するが、その生理的意義は推測の域を出ていない。我々のNCoR-KOマウスの解析は、このcorepressorが生体内でRARやTRの転写抑制作用に必要であり、さらに、NCoRは神経系の分化、胸腺形成や血球形成など胚発生において必須の役割を果たすことを示し、CoRの生体内での機能の解明に有用な示唆を与えた。

世 話 人: 伊庭 英夫
田中 廣壽