東京大学医科学研究所

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学友会セミナー

最新の学友会セミナー

開催日時: 2017年4月14日 16:30~17:30
開催場所: 2号館 小講義室
講師: 中川 草
所属: 東海大学 医学部 基礎医学系 分子生命科学・助教
演題: 分子進化学・生命情報学の手法を用いたダイナミックなゲノム進化の解明
概要:

私はゲノム・トランスクリプトーム配列などの大規模な遺伝情報解析により、ゲノムレベルでのダイナミックな生物進化を明らかにしてきました。特に1)蛋白質の翻訳開始メカニズムの進化、2)多重遺伝子族(multi-gene family)の進化、3)ウイルス・微生物と宿主の進化的軍拡競争などの研究に取り組んでいます。今回の講演では私が関わった以下のいくつかの研究やその手法などを幅広く紹介したいと考えています。

1) 遺伝子の翻訳開始メカニズムはすべての生物に共通する根本的なメカニズムであるにもかかわらず、翻訳開始メカニズムが種の系統ごとに大きく異なることを比較ゲノム解析から明らかにしました(Nakagawa et al. NAR 2008, PNAS 2010, NAR 2017)。2) 転写因子であるフォークヘッド遺伝子ファミリーを解析し、遺伝子の塩基配列の変化とその結合するDNA配列のパターンがダイナミックに変化していることを実験生物学と分子進化学の共同研究から明らかにしました(Nakagawa et al. PNAS 2013)。その他にもインターフェロン(IFN)タウ(Sakurai et al. PLoS ONE 2013)やIFNラムダ(Ueda et al. in preparation)、脂質キナーゼPI5P4K(Nakagawa et al. in preparation)などの多重遺伝子族について、実験生物学と共同での分子進化解析を行っています。3) ウイルスが宿主ゲノムに内在化した配列(EVE)に関する大規模解析を行っています。ウシ胎盤発生に関与するEVE由来の新規遺伝子の発見(Nakagawa et al. GBE 2013, Nakaya et al. JVI 2013)、イエネコの系統分類に活用できるEVEマーカーの発見(Shimode et al. Sci. Rep. 2015)、蛋白質をコードするEVEの新規発見を促進するためのデータベース構築(Nakagawa and Takahashi Database 2016)、そして機能性EVEのダイナミックな進化に関連する仮説の提唱を行いました(Imakawa et al. Genes Cells, 2016)。その他にも、エボラウイルスの糖蛋白質の変異にかかった進化的な淘汰圧を調べ、増殖に関係するアミノ酸変異を同定しました(Ueda et al. Genes Cells 2017)。加えて、Oxford Nanopore Technologies社のMinIONシーケンサを活用し、感染症の迅速ゲノム診断のためのシステムの構築を進めています。現在まで、任意のDNAサンプルからPCR等を含めて2時間以内に含有する細菌を同定できるシステムを構築し(Mitsuhashi et al. in revision)、現在はその精度を高める研究と細菌以外の生物も対象とするための研究を行っています。

世話人: ○河岡 義裕 (ウイルス感染分野)
川口 寧 (ウイルス病態制御分野)
開催日時: 2017年4月12日 17:30 ~ 18:30
開催場所: 2号館2階 小講義室
講師: Andrew Zolopa
所属: Global Medical Director, ViiV Healthcare company, Professor emeritus Stanford University
演題: HIV infection, treatment and upcoming future
概要:

It has been two decades since “HAART” or “cART” appeared in late 1990s. Contemporary potent 3-drug antiretroviral treatment has led to remarkable declines in morbidity and mortality in treated HIV-infected persons. However, antiretroviral therapy has made astonishing progress both in efficacy and safety during the time as current treatment guidelines in US, EU and Japan placed integrase inhibitors such as doltegravir at the core of HIV treatment. Without question, current preferred regimens composed of 3 drugs are far more promising than 20 years ago and it enables HIV patients to live longer as the result. The next question will be “Do we still need 3 drugs?”.
The first main topic of the day will be “HIV treatment in the future”.
As ART needs to be taken life long, there is an unmet need for streamlined regimens that can minimize antiretroviral-related long-term toxicities and drug-drug interactions while maintaining viral suppression owing to the high antiretroviral potency of doltegravir. It will not only doltegravir but other upcoming agents under development that will play the key role of HIV treatment in the future.
In this lecture, Professor Zolopa will focus on the recent data for 2 drug regimens that include DTG and also long-acting INSTI- Cabotegravir. The focus of this presentation will be to ask the clinical question, “can we do more health with fewer drugs”. In other words, if we are able to maintain viral suppression with fewer drugs (ie 2DR) will this improve the long-term health of persons living with HIV on life-long ART?
Also, CROI 2017 update will be presented such as ~Immune reconstitutions, complications relevant to chronic inflammation caused by HIV, HIV cure, HTLV-1~ (contents are subject to change)

世話人: ○四柳 宏(感染症分野)
 内丸 薫(病態医療科学分野)
開催日時: 2017年3月29日 14:00〜15:00
開催場所: 総合研究棟4階共用会議室
講師: 牧山 純也
所属: 国立病院機構長崎医療センター血液内科/外来化学療法センター
副センター長
演題: 長崎大学病院における高齢者成人T細胞白血病・リンパ腫 (ATL) の治療成績
概要:

成人T 細胞白血病・リンパ腫 (ATL) は、HTLV-1感染者の一部に発症する末梢性T細胞性腫瘍である。全国調査での患者年齢中央値は67歳で、その高齢化が指摘されている。化学療法の対象であるAggressive ATL(急性型、リンパ腫型、予後不良因子を有する慢性型)に対して、VCAP-AMP-VECP療法は標準的な治療法の一つと考えられているが、高齢者での有用性は検証されていない。今回、1994年から2010年に長崎大学病院で初回治療が実施されたaggressive ATL患者(同種造血幹細胞移植施行例を除く)148例の治療成績を後方視的に検討した。70歳以上の高齢者は54例で、生存期間中央値(MST)10.6ヶ月、2年生存率22.1%であった。若年者群94例のMSTは11.7ヶ月、2年生存率は26.4%であった。高齢者群の34例でVCAP-AMP-VECP療法が行われ、うち31例は初回から投与量が減量されていた。34例全体のMSTは13.4ヶ月、2年生存率は26.4%であり、若年者に遜色のない成績であった。抗CCR4抗体であるモガムリズマブの至適使用方法の検討は今後の重要な課題であるが、高齢者aggressive ATLを対象とした前向き比較試験の実施は困難が予想される。本研究は今後の治療法の開発に際して重要な基礎的データとなることが期待される。

世話人: ○四柳 宏 (感染症分野)
 東條 有伸 (分子療法分野)
開催日時: 2017年3月22日 18:00 ~ 19:00
開催場所: 2号館小講義室
講師: 村西 由紀
所属: 帯広畜産大学 畜産生命科学研究部門・助教
演題: 周産期の母体低栄養とそのこどもの生殖器の発育
概要:

不妊は現代において大きな社会問題であり、日本では5組に1組が不妊症であると報告されている。これは、ライフスタイルの変化による女性の高齢化が原因として考えられているが、男性側の不妊要因についてはまだ明らかになっていない。いくつかのコホート研究では、男性の精子数が急激に減少していることが報告されており、社会環境やストレス、内分泌かく乱物質、そして食生活の変化などが考えられている。また、妊娠期の母体内分泌が子どもの生殖器の発育に影響をおよぼすことも報告されており、母体環境が子どもの不妊に起因する可能性が示唆されている。
そこで、今回の講演では、妊娠期から授乳期の母体の低タンパク質状態がおよぼす、その子どもの生殖器の発達と繁殖性について、とくに男性不妊に注目してマウスをモデルに行った研究を紹介する。この研究は、私がフランスの国立農学研究所(INRA)にて留学していた頃のものであり、フランスの滞在記やラボの様子も交えて紹介する。
さらに、現在所属する帯広畜産大学について、大型動物(ウシ、ブタ、ウマ)を扱った教育および研究についても紹介し、畜産業の発展からヒト医療までを目指した研究についても伝えたい。

世話人: ○田中 廣壽(附属病院 抗体・ワクチンセンター)
 武川 睦寛(分子シグナル制御分野)
開催日時: 2017年3月31日 17:00 ~ 18:30
開催場所: 総合研究棟4階 会議室
講師: 永島 一樹
所属: 東京大学大学院医学系研究科 病因・病理学専攻 免疫学教室
演題: Identification of microfold cell-inducer (MCi) cells that regulate IgA production and diversify the gut microbiota
概要:

Mammalian intestine hosts trillions of microbes and deploys a large number of immune cells. A continuous dialogue between immune cells and luminal microbes is critical for the maintenance of intestinal homeostasis. Intestinal epithelium is a single-layered cell sheet that separates microbes and the intestinal immune system. The appropriate development and maintenance of epithelium is essential for the clearance of pathogens and the prevention of excess immune reactions against commensal bacteria. Microfold (M) cell is one type of the epithelial cells specialized for bacterial sampling from the lumen and initiate germinal center formation and IgA production in the gut associated lymphoid tissues (GALTs) including Peyer’s patches (PPs). Previous reports showed that TNF family cytokine RANKL is indispensable for M cell development. However, the precise producer of RANKL has not been determined.
In this talk, I show that previously unrecognized subepithelial mesenchymal cells express RANKL and serve as M cell-inducer (MCi) cells. The specific deletion of RANKL in mesenchymal cells caused impaired M cell differentiation as well as reduced IgA production against gut microbes, resulting in an altered gut microbial composition and a decrease in microbial diversity. Thus, MCi cells play a fundamental role in the maintenance of intestinal immune homeostasis.

世話人: ○清野 宏 (炎症免疫学分野)
 三宅 健介(感染遺伝学分野)
開催日時: 2017年3月21日 11:30 ~ 12:30
開催場所: 2号館 大講義室
講師: 新澤 未穂
所属: Experimental Immunology Branch, NCI, NIH ・ Postdoctoral Fellow
演題: FlipFlop mice have a reversed T cell immune system: MHC-I/CD8 Helper and MHC-II/CD4 Cytotoxic T cells
概要:

Almost all of T cells generate in the thymus. In the thymus, the fate of conventional T cells is determined as either CD4 T cells or CD8 T cells, which function mainly helper T cells or killer T cells, respectively, in periphery. To date, mechanisms underlying the fate determination of conventional T cells remain yet to be elucidated.
We recently generated unique “FlipFlop” mice in which both Cd4 and Cd8 gene loci encoded the opposite co-receptor protein. CD4 and CD8 T cells in FlipFlop mice recognize MHC-II and MHC-I ligands, respectively. Importantly, MHC-II/CD4 T cells in FlipFlop mice have cytotoxic function, while MHC-I/CD8 T cells have helper function. Thus, FlipFlop mice have a functionally reversed T cell immune system. As result, we propose that CD4/CD8 T cell lineage fate in the thymus might be determined by Cd4/Cd8 gene loci independently of the co-receptor proteins they encode and regardless of TCR MHC specificity.

世話人: ○井上 純一郎(分子発癌分野)
 吉田 進昭(発生工学研究分野)
開催日時: 2017年2月15日 16:30 ~ 17:30
開催場所: 2号館2階小講義室
講師: 千村 崇彦
所属: 東京大学 医科学研究所 神経ネットワーク分野 特任研究員
演題: 中枢神経系におけるシナプス局在性蛋白質の機能解析
概要:

中枢神経系における神経細胞同士の接点であるシナプスは、神経細胞間の情報伝達を担う重要な構造であり、シナプスに集合する蛋白質の機能と制御機構を理解することは、神経可塑性や神経疾患を分子レベルで理解する上で重要な課題である。今回のセミナーでは、2つの研究テーマに関して紹介したい。
第一のテーマは、グルタミン酸受容体の過剰刺激によって細胞死が誘導される条件(興奮毒性)でのドレブリンの安定性の制御機構について。ポストシナプス側に集積し、f-アクチン安定化蛋白質として知られるドレブリンが興奮毒性条件下でカルシウム依存性プロテアーゼであるカルパインにより直接的な蛋白質分解を受けることに加え、f-アクチンの安定性との協調的な制御が存在することが示唆されたことを主に提示する。
第二のテーマは、神経機能に関与する新規蛋白質の同定と機能解析について。シナプス構造に集積する可能性のある蛋白質を新規に単離する目的で、数アミノ酸からなるある種の配列パターン(モチーフ)に着目する戦略に基づき、機能未知蛋白質としてUF1 (Unknown Function 1)を同定し、実際にポストシナプスに存在していることを明らかにした。ノックアウトマウスの表現型解析をはじめとした機能解析について提示する。

世話人: ○武川 睦寛(分子シグナル制御分野)
 真鍋 俊也(神経ネットワーク分野)
開催日時: 2017年2月9日 18:00 ~ 19:00
開催場所: 2号館2階 小講義室
講師: 長門石 曉 
所属: 東京大学大学院工学系研究科・助教
(東京大学創薬機構 兼任)
演題: 物理化学を駆使した次世代創薬の基盤技術開発
概要:

分子標的創薬においては、薬剤が標的分子に対して高い結合親和性と特異性をもって活性を示すことが重要である。しかしながら、たとえば従前の低分子医薬品の探索・設計において、標的分子と低分子薬剤との相互作用様式に関して不明瞭な点も少なくなく、その結果リード探索における構造展開の効率が悪い、低特異性によるoff-target作用が不可避となる、という課題が問題になっている。我々は、低分子薬剤探索における化合物の結合に関するバリデーションやオプテマイゼーションにおいて、その結合様式の“質”を評価するために、“物理化学的解析技術”が有用であるとの立場から研究を展開している。また、同様のアプローチを次世代抗体創薬にも展開させている。抗体医薬品は難病疾患の治療薬として威力を発揮しているが、高い製造コストや体内の標的部位が限定されてしまうなどの課題が残されている。近年、既存の抗体医薬品を改良し、機能や物性を向上させることで価値を高める次世代抗体戦略の期待が高まっている。例えばin silicoシミュレーションの導入は、合理的かつ高速な分子設計を現実的なものとしつつあり、実験的検証とのクロストークによる設計技術高度化への関心が高まっている。
本セミナーでは、まず、物理化学的解析技術を基盤に展開した、蛋白質-蛋白質間相互作用PPIを標的とした低分子阻害剤探索に関する研究成果を紹介する。続いて、in silicoとin vitro物理化学的相互作用解析を組み合わせることで提案が可能になった、抗体の高機能化へ向けた設計指針に関する新たな観点についての研究成果も紹介する。

世話人: ○東條 有伸(先端医療研究センター・分子療法分野)
 田中  廣壽(抗体・ワクチンセンター・アレルギー免疫科)
開催日時: 2017年2月13日 14:30 〜 15:30
開催場所: 2号館 小講義室
講師: Jee-Woong Park
所属: 東京大学大学院理学系研究科化学専攻化学科 特任研究員
演題: Novel Technologies for Screening of Aptamer and Its Applications
概要:

Aptamers are short single-stranded nucleic acids that fold into three-dimensional structures for binding to the specific target molecules with high affinity. Aptamers can form various structures including stems, loops, bulges, hairpins, pseudoknots, triplexes and quadruplexes, in order to bind to various targets. Systematic evolution of ligands by exponential enrichment (SELEX) has been used for the development of aptamers, in which one can alter binding, separation, and amplification upon various needs.
In this talk, I will describe the methods of the aptamer generation using graphene oxide (GO) or microfluidics, allowing efficient screening of aptamers. The GO has an ability to separate free short ssDNA from heterogeneous solution. I developed a novel immobilization-free SELEX method by exploiting the ability of GO that can adsorb ssDNAs (GO-SELEX). This method allows a highly efficient removal of the ssDNA that is not bound to the target molecule from among the initial random library of ssDNA. Moreover, the target-induced conformational change of aptamers that are adsorbed onto the surface of GO initiates the affinity based desorption of ssDNAs from the GO.
Using the GO-SELEX method, I successfully generated DNA aptamers against a protein Nicotinamide phosphoribosyltransferase (NAMPT) and a complex target whole-virus of bovine viral diarrhea virus (BVDV) type 1 respectively with focusing on the interaction between those specific targets and ssDNA that is adsorbed onto the GO surface via π-π stacking.
In addition to the GO-SELEX, I will describe a new screening method for obtaining aptamer against a prostate-specific antigen (PSA) by using an acoustophoreis technique. Since this method allows simultaneous washing and separation of aptamers in a continuous flow mode, one can obtain the aptamer with high affinity to PSA without any additional washing step. In order to further accelerate the selection process of the aptamer, next-generation sequencing (NGS) analysis was also combined with the screening method.

世話人: ○武川 睦寛 (分子シグナル制御分野)
 真鍋 俊也 (神経ネットーワーク分野)
開催日時: 2017年2月7日 15:00 ~ 15:40
開催場所: 総合研究棟2階共用会議室
講師: 大田 泰徳
所属: 帝京大学病理学講座・准教授
演題: 病理形態学的アプローチによる疾患の研究
概要:

形態学的観察は最も原始的な科学的アプローチ方法の一つである。形態学的観察は分子生物学に比べて客観性には劣るものの、簡便であること、対象を広く観察できることや、過去の蓄積された経験則に照らし合わせることができるなどのメリットがあり、今日でも有効なアプローチになることがある。
今回は、4年弱に亘る東京大学医科学研究所附属病院にて切除ないし剖検が行われた症例の解析、医科学研究所幹細胞治
療分野との共同研究の成果について、主に形態学的見地からのアプローチについて発表を行う。ムコール症は化学療法後などの免疫低下時に重篤になりうる感染症であるが、剖検例において血管侵襲性が強いことから、保存血清を解析し、死亡約3週間前の段階から血清に対するPCR法を用いることにより診断に至る可能性があることが判明した。造血微小環境における必須アミノ酸に関する知見はこれまでほとんど得られていなかったが、バリンが造血において必須であること、そしてバリンの欠乏が造血微小環境に大きな影響を与えること、その他の全身臓器に形態学的な大きな変化をもたらさないことが判明した。これは新たな骨髄移植法につながる可能性が示唆された。

世話人: ○四柳 宏 (先端医療研究センター)
 小澤 敬也 (病院長)