東京大学医科学研究所

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学友会セミナー

最新の学友会セミナー

開催日時: 2019年3月14日 9:00 〜 10:00
開催場所: 1号館2階 2-1会議室
講師: 磯部 優理
所属: 東京大学医科学研究所附属病院 血液腫瘍内科 医員
演題: 新規ペア型免疫受容体LMIR6/CD300eの機能解析
概要:

免疫担当細胞の表面受容体は多岐に渡り、生体内外の環境を捉えることで免疫応答を制御する重要な役割を担っている。特にペア型受容体と呼ばれる一群は、相同性の高い活性型受容体と抑制型受容体の対を有する特徴を持ち、リガンドの僅かな違いを元に緻密な免疫制御を司るものとして注目されてきた。我々がマウス骨髄由来マスト細胞cDNAからクローニングしたCD300/leukocyte mono-immunoglobulin-like receptor (LMIR)ファミリーについては、マウスに6種類の活性型受容体と2種類の抑制型受容体を有すること、骨髄系細胞に発現が認められること、生理的リガンドとして脂質を認識すること、ヒトにいくつかの相同体を有することなどを明らかとしてきた。今回着目したCD300e/LMIR6は活性型受容体のひとつである。我々は抗CD300e/LMIR6抗体を作成することにより、CD300e/LMIR6がマウスでは末梢血単球の一部にのみ発現すること、活性化シグナルをアダプター分子FcRγやDAP12に依存すること、ヒトに相同体を有することなどを明らかとした。また、レポーターアッセイによりリガンドとしてスフィンゴミエリンを同定し、固相化したスフィンゴミエリンでヒト末梢血単球各分画を刺激した場合、CD300e/LMIR6依存的なTNFα産生を認めることを明らかとした。これらの結果は、CD300e/LMIR6によって単球における自然免疫応答が正に制御されていること、また、これまで生体構成成分の一部と考えられていたスフィンゴミエリンが何らかの形で免疫応答に関与している可能性を示唆するものであった。

世話人: 〇北村 俊雄 (細胞療法分野)
 東條 有伸(分子療法分野)
開催日時: 2019年3月6日 14:00 ~ 15:00
開催場所: 1号館講堂 
講師: 山本 正人
東京大学医科学研究所 国際共同利用・共同研究拠点 共催
所属: ミネソタ大学医学部外科、がんセンター
基礎・トランスレーショナル研究部長、教授
演題: 消化器癌を標的としたオンコリティック・アデノウィルスの開発と今後の展望
概要:

当研究室は消化器がんを標的とした遺伝子治療およびオンコリティックウィルス療法の開発を長年行ってきた。最近注力してきたInfectivity Selective Oncolytic Adenovirusの開発をはじめとしたLocal, Regional, Systemicな癌の病状に即したOncolytic Adenovirusの開発を振り返ると共に、それらから派生した新しい技術と、今後の展望について俯瞰したい。

世話人: 〇東條 有伸 (分子療法分野)
 北村 俊雄 (細胞療法分野)
開催日時: 2019年3月26日 16:00  ~  17:00
開催場所: 総合研究棟4階 会議室
講師: 佐藤 尚子
所属: 理化学研究所生命医科学研究センター粘膜システム研究チーム
研究員
演題: Stomach ILC2s are regulated by commensal bacteria and can be activated in response to the pathobiont Helicobacter pylori.
概要:

Innate lymphoid cells (ILCs) are composed of 3 different groups as ILC1s, ILC2s and ILC3s, which are divided based on the function and cell-development. ILCs are implicated as key initiators of immune responses at many organs including mucosal sites through their production of cytokines. Recent studies revealed that cytokines derived from ILC subsets can be triggered for the induction of diseases or disrupting homeostasis. The gut microbiota has a well-documented impact on immune development and regulation of immune responses, whereas the importance of microbiota for the ILCs-regulation in the mucosal tissues has not been well understood. Especially, very little is known about host microbial interactions, including immunological regulation and responses, in the stomach. We therefore compared two mucosal organs, small intestine (SI) and stomach, by focusing on ILC subsets from SPF and germ free (GF) mice. Different from the SI having distinct populations of ILC1s, ILC2s and ILC3s, the stomach had a large proportion of ILC2s with few ILC1s and virtually no ILC3s in SPF mice. These ILC2s are markedly decreased in GF compared to SPF mice. We found that microbes can elicit IL-7 and IL-33 production in the stomach, which in turn triggers ILC2s. We further detected that stomach ILC2s are also rapidly induced following infection with Helicobacter pylori (H. pylori), which in turn induced IgA production through IL-5 secretion. ILC2s in the stomach were still left unexamined especially in terms of relationship with microbes and innate immune responses. Our study thus identified a novel ILC2-dependent IgA response that is regulated by commensal and pathogenic bacteria, and implicated in barrier function in the stomach.

世話人: 〇藤橋 浩太郎 (臨床ワクチン学分野)
 植松 智 (自然免疫制御分野)
開催日時: 2019年3月18日 15:00 ~ 16:00
開催場所: 総合研究棟4階 会議室
講師: 保富 宗城
所属: 和歌山県立医科大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座
教授
演題: 鼻咽腔における肺炎球菌保菌機序と母乳栄養による感染予防
概要:

鼻咽腔は、外来からの病原微生物の侵入門戸にあり、絶えず病原性微生物に暴露されるとともに、それらに対する宿主免疫応答がせめぎ合う生体防御の最前線に位置するともに、鼻咽頭関連リンパ装置を中心とした生体防御粘膜免疫機構が存在する。本発表では、鼻咽腔における細菌叢の成立と、母乳栄養に着目した感染予防の可能性について肺炎球菌感染症を中心に述べる。
1.細菌感染機序と細菌叢の成立
 ヒト鼻咽腔には様々な細菌よりなる細菌叢が存在する。耳鼻咽喉科感染症の重要な原因菌である肺炎球菌は、Pneumococcal surface protein A (PspA)あるいはpneumolysin (PLN)を巧妙に使い鼻咽腔に定着すると考える。また、口腔咽頭の粘膜免疫の要となるヒト口蓋扁桃では、歯周病原因菌とされる嫌気性菌群(Red Complex)が扁桃陰窩細菌叢で多く検出される。Red ComplexがSupporterとして、乳酸菌などの常在菌(Competitor)に対し、咽頭・扁桃粘膜上皮内に侵入共生した化膿レンサ球菌(GAS)などのPathogenの増殖を促すと考える(多細菌性仮説)。
2.母体免疫による乳幼児期感染予防
 細菌叢の成立と病原微生物の感染に対して、2歳未満の乳幼児期は免疫学的に未成熟であり、急性中耳炎を好発する。妊娠前のマウスに経粘膜免疫をおこなうこと(母体免疫)により、高い胎盤移行抗体および母乳抗体が誘導されるとともに、母乳栄養により高い抗体価が維持されマウス鼻咽腔における肺炎球菌の定着が抑制される。さらに、母乳栄養マウスでは、免疫学的記憶が維持されることから、母乳を介した免疫再構築が乳幼児期の免疫応答に重要となる。

世話人: 〇藤橋 浩太郎 (臨床ワクチン学分野)
 倉島 洋介 (粘膜免疫学部門)
開催日時: 2019年3月13日 16:00 ~ 17:00
開催場所: 1号館2階 2-1会議室
講師: 伊藤 博崇
所属: ハーバード大学 ブリガム・アンド・ウィメンズ病院
脳神経外科 研究員
演題: 脳腫瘍マウスモデルに対する遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス治療におけるモニタリング解析
概要:

悪性神経膠腫は、手術、化学療法、放射線療法による集学的治療がなされているにも関わらず、この数十年間生命予後の改善が見られておらず、全く異なる治療アプローチの開発が求められている。そこで、がん細胞で選択的に複製してがん細胞を破壊するがん治療用ウイルスを用いたウイルス療法が、日本、欧米を中心に進められ注目されている。遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス(HSV)による抗腫瘍効果の機序はウイルス感染・複製による直接的殺細胞効果と、それに引き続いて起こる腫瘍特異的細胞傷害性T細胞の活性化によると考えられている。伊藤博士は、悪性神経膠腫に対するウイルス療法の臨床試験では患者によって治療反応性に違いが見られることに着目し、その治療反応性の決定因子の解析を目的として、脳腫瘍モデルを用いた腫瘍・ウイルスの力学動態の解析を行った。その結果、脳を用いた免疫組織化学染色でResponder、Non-Responder間で自然免疫細胞の分布が異なることを見出した。さらにRNAシーケンスによる発現解析を行い、免疫細胞の発現プロファイルにも違いがあることを発見した。本セミナーでは、治療反応性規定因子の絞り込みや、特異的な薬剤併用によるウイルス療法の効果改善への挑戦についてもご紹介いただく予定である。

世話人: 〇北村 俊雄 (細胞療法分野)
 藤堂 具紀 (先端がん治療分野)
開催日時: 2019年3月8日 15:00 ~ 16:00 
開催場所: 1号館2階 2-3会議室
講師: 上久保 靖彦
所属: 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 
ビッグデータ医科学部門・癌創薬イノベーション研究室・特定教授
演題: Potential almighty anti-cancer therapeutic strategy through CROX (Cluster regulation of RUNX family).
概要:

Runt-related transcription factor 1 (RUNX1) is generally considered to function as a tumor suppressor in the development of leukemia, but a growing body of evidence suggests that it has pro-oncogenic properties in acute myeloid leukemia (AML). Here we have demonstrated that the antileukemic effect mediated by RUNX1 depletion is highly dependent on a functional p53-mediated cell death pathway. Increased expression of other RUNX family members, including RUNX2 and RUNX3, compensated for the antitumor effect elicited by RUNX1 silencing, and simultaneous attenuation of all RUNX family members as a cluster led to a much stronger antitumor effect relative to suppression of individual RUNX members. Switching off the RUNX cluster using alkylating agent–conjugated pyrrole-imidazole (PI) polyamides, which were designed to specifically bind to consensus RUNX-binding sequences TGTGGT or TGCGGT, were highly effective against AML cells and against several poor prognosis solid tumors in a xenograft mouse models without notable adverse events. Taken together, these results identify a crucial role for the RUNX cluster in the maintenance and progression of cancers and suggest that modulation of the RUNX cluster using the PI polyamide gene-switch technology is a potential strategy to control malignancies. we refer to as “cluster regulation of RUNX (CROX).” Further studies involving clinical trials with this drug are awaited to validate the CROX strategy against human cancers.
【References】
・Accelerated leukemogenesis by truncated CBF beta-SMMHC defective in high-affinity binding with RUNX1. Kamikubo Y et al. Cancer Cell. 17:455-68, 2010.
・Genetic regulation of the RUNX transcription factor family has anti-tumor effects. Morita K ・・Kamikubo Y. J Clin Invest 127:2815-2828, 2017.
・Role of RUNX1 in hematological malignancies. Sood R*, Kamikubo Y*, et.al. Blood. 129:2070-2082, 2017.
・RUNX transcription factors potentially control E-selectin expressions in the vascular niche of mice bone marrow. Tokushige C ・・Kamikubo Y. Blood Adv. 2:509-515, 2018

世話人: 〇今井 陽一  (血液腫瘍内科)
 東條 有伸 (分子療法分野)
開催日時: 2019年3月13日 11:00 ~ 12:00
開催場所: 2号館 大講義室
講師: 鈴木 由紀 
所属: 日本大学生物資源科学部・専任講師
演題: インフルエンザウイルスのゲノム適応進化
概要:

インフルエンザウイルスはダイナミックに進化するウイルスで、進化と病原性が密接に関係している。例えば、免疫回避や薬剤耐性ウイルスは、インフルエンザウイルスのゲノムにアミノ酸突然変異が生じることによって出現する。また、新型インフルエンザウイルスは、ヒトやトリ、ブタ由来のウイルスが遺伝子再集合を起こすことによって誕生し、パンデミックな流行を起こす。このように、インフルエンザウイルスの進化はウイルスの病原性の獲得進化に関わることは自明であるが、いまだに本ウイルスの制御は難しく、ウイルスは我々を先回りして進化する。
インフルエンザウイルスは古くから塩基配列が決定されており、データベースには現時点において57万本以上の塩基配列が登録されている。その殆どは、野外で流行したウイルスに由来することから、宿主との攻防に打ち勝ったウイルスの進化情報が多く蓄積されている。発表者は、これらの遺伝情報と分子進化学的手法を用いてインフルエンザウイルスの適応進化機構の解明を行なっている。本セミナーではその中から、ヘマグルチニンのN型糖鎖付加部位の獲得進化と、ウイルスの複製に関わるRNA二次構造の進化に関する研究を中心に紹介したい。

世話人: 〇河岡 義裕 (ウイルス感染分野)
 川口 寧 (ウイルス病態制御)
開催日時: 2019年3月6日 14:00 ~ 15:30
開催場所: 1号館 2-3会議室
講師: 小檜山 康司
所属: 米国ラホヤ免疫研究所 研究員
演題: 新規アジュバント開発と非感染性疾患ワクチン開発の試み
概要:

ワクチンは歴史上最も成功した医療技術の一つであり、現在約30種類の感染症および感染症関連疾患がワクチンによって予防できるとされている。ワクチンがその効果を最大限に発揮するにはアジュバントの働きが必須であるが、1920年代から80年以上もの間アルミニウムアジュバントのみが用いられてきた。しかしながら、ある種の感染症やがんワクチンにおいてはアルミニウムアジュバントでは最適な獲得免疫応答を誘導することが困難であり、新規アジュバントの開発が強く望まれている。一方で、ワクチンは感染症関連疾患だけではなく、自己免疫疾患や慢性炎症性疾患にも有用であることが動物実験で示されており、動脈硬化症やアルツハイマー、糖尿病ワクチンは臨床試験も行われている。動脈硬化症および動脈硬化症関連疾患は未だに死因原因の世界第一位であり、スタチンなどの対症療法薬は存在するものの、新たな治療法の確立が期待されている。

本セミナーでは1) 合成Toll-like receptor 9リガンドを用いた新規アジュバント開発研究、2)動脈硬化症ワクチン開発研究に関して我々の研究成果を中心に発表したい。

世話人: 〇三宅 健介 (感染遺伝学分野)
 石井 健 (ワクチン科学分野)
開催日時: 2019年2月22日 16:00 ~ 17:30
開催場所: 1号館 講堂
講師: 前田 健
所属: 山口大学共同獣医学部獣医微生物学教室・教授
演題: 動物における感染症に注目!
概要:

多くの新興人獣共通感染症は、動物からのSpilloverによって発生している。重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスは野生動物での蔓延とその結果としてヒトやネコ・イヌ・チーターが犠牲になっている(節足動物-ヒト伝播)。更に、動物からのマダニを介さない獣医師・飼い主への感染が発生している(動物-ヒト伝播)。加えて、SFTSウイルスと同じ科の多くのウイルスを国内のマダニが保有していること、海外と渡り鳥を介する移動の可能性も判明してきた。
飼い主からの飼育フェレットへのヒトインフルエンザウイルス感染が発生している(ヒト-動物伝播)。飼い主は既にインフルエンザウイルスに感染しているので再感染することはないかもしれないが、病気になったフェレットが連れてこられる動物病院の獣医師などへの感染は起こっているのではないだろうか(動物-ヒト伝播)。
ヘルペスウイルスは宿主以外の動物に感染すると致死的な病気を引き起こす危険な病原体である。国内でもイノシシからアライグマへのオーエスキー病ウイルスの致死的感染、ヒツジ属の動物からウシ科の動物への悪性カタル熱ウイルスの致死的流行が起こっている(自然宿主-異宿主伝播)。ヒトの単純ヘルペスウイルスの研究者も、マウスを殺す能力があることを忘れてはいけない。
犬ジステンパーウイルスは撲滅された牛疫ウイルス、撲滅が進んでいる麻疹ウイルスと非常に近縁なウイルスである。犬ジステンパーウイルスは国内で多くの野生動物を殺しており、中国でも飼育サルを殺している。犬ジステンパーウイルスがヒトに感染する時代は来るのであろうか?
以上は我々の実施している研究の一部に過ぎない。動物における感染症の動態に目を向けることが重要である。

世話人: 〇川口 寧 (ウイルス病態制御分野・教授)
 河岡 義裕 (ウイルス感染分野・教授)
開催日時: 2019年2月14日 17:00 ~ 18:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 講堂
講師: Yu Shyr
所属: Harold L. Moses Chair in Cancer Research Chair, Department of Biostatistics Director, Vanderbilt Center for Quantitative Sciences Director, Vanderbilt Technologies for Advanced Genomics Analysis and Research Design Professor of Biostatistics, Biomedical Informatics, Cancer Biology, and Health Policy Vanderbilt University Medical Center
演題: Big Data, Smart Data, and Actionable Data:
Shaping the Future of Precision Medicine and Healthcare
概要:

The key concepts of precision medicine are prevention and treatment strategies that take individual molecular profile and clinical information into account. Single-cell next-generation sequencing technologies (NGS), liquid biopsy for circulating tumor DNA (ctDNA) analysis, microbiomics, radiomics, and other types of high-throughput assays have exploded in popularity in recent years, thanks to their ability to produce an enormous volume of data quickly and at relatively low cost. The emergence of these big data has advanced the goals of precision medicine; however, across the entire continuum of big data capture and utilization, many more challenges lie ahead—from analysis of high-throughput biomarkers to maximum exploitation of the electronic health record (EHR), to the ultimate goal of clinical guidance based on a patient’s genome.
In recent years, almost all top biomedical journals have published major findings using advanced data science technologies, including complex statistical modeling, machine learning, and AI. Interpreting these results for patients and applying them for clinical guidance, however, remain significant challenges.
In this presentation, I will offer some perspectives on the changing landscape for precision medicine, including the road map for choosing between statistical modeling and machine learning; the concept of treating unstructured text as quantitative data; the need for physicians to adapt their mindset around the explosive growth in information technology; machine learning; and the AI revolution. These areas present great opportunities for medical researchers to strengthen their role in precision medicine. I will finish up with some thoughts about future medical developments, including how to design and conduct pivotal trials, pragmatic trials, and real-world evidence studies in the precision medicine era.

世話人: 〇村上 善則 (人癌病因遺伝子分野)
 武川 睦寛 (分子シグナル制御分野)