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東京大学医科学研究所

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学友会セミナー

最新の学友会セミナー

開催日時: 2013年5月23日 17:00-18:00
開催場所: 東京大学医科学研究所附属病院 8階 トミーホール
講師: 久保 充明
所属: 理化学研究所統合生命医科学研究センター 副センター長
演題: オーダーメイド医療実現化プロジェクト
~バイオバンク・ジャパン(BBJ)10年間の歩みと今後の方向性~
概要:

21世紀に入り、ヒトゲノム計画、国際ハップマッププロジェクト等のヒトゲノム研究基盤の構築とヒトゲノム解析技術の進歩により、多くの疾患や薬剤反応性に関わる遺伝要因が急速に明らかになりつつある。
2003年に文部科学省リーディングプロジェクトとして開始されたオーダーメイド医療実現化プロジェクトは、第1期の5年間(2003~2008年)に、全国12医療機関、66病院の協力を得て47疾患、約20万人(32万症例)のDNA、血清、臨床情報を収集し、東京大学医科学研究所にバイオバンク・ジャパン(BBJ)を構築した。第2期(2008~2013年)では、第1期で構築されたプロジェクト推進体制を維持継続するとともに、第1期協力者の約15万人について追跡調査を実施している。また、理化学研究所ゲノム医科学研究センターを研究中核機関としてBBJサンプル等を用いた大規模なゲノムワイド関連解析を実施し、疾患や薬剤反応性に関連する遺伝子を同定している。
本講演では、本プロジェクトの成果やバイオバンクの動向等を踏まえた今後の方向性について概説したい。

世話人: ○清野 宏 (炎症免疫学分野・教授)
 武藤 香織(公共政策研究分野・教授)
開催日時: 2013年5月10日 10:00-11:00
開催場所: 東京大学医科学研究所附属病院A棟 8階 南(小)会議室
講師: 大野 伸広
所属: 東京大学医科学研究所附属病院 血液腫瘍内科・助教
演題: 『ATLの診療と研究』
概要:

成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)は難治性の造血器悪性主要である。医科研病院血液腫瘍内科ではATLの診療と研究をひとつの柱として臨床を展開している。近年、ATLに同種造血幹細胞移植(allo-SCT)が有効であることが示唆され、我々のグループでも積極的にSCTを治療に取り入れ、これまでのところ、従来の化学療法中心の治療に比べ好成績を挙げている。一方、ATLの診療に欠かせないATL細胞の同定は、これまで細胞形態に依存し主観的な側面が強かった。これを改善すべく、我々はマルチカラーフローサイトメトリーにより(HAS-Flow法)客観的にATL腫瘍細胞を同定し、診療に応用するともに、高純度でクローン化したATL細胞を選別でき得ることで、キャリアーの高危険度群の選別や、ATL細胞の特性の評価に発展してきている。これまでの診療実績やそこから派生する研究の展開などについて概説したい。

世話人: ○東條 有伸(分子療法分野・教授)
 内丸 薫(血液腫瘍内科・准教授)
開催日時: 2013年5月16日 10:00-11:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 合同ラボ棟 3階 セミナー室
講師: 須賀 晶子
所属: 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター
網膜再生医療研究開発プロジェクト 研究員
演題: 網膜障害条件下でミュラーグリア細胞の細胞周期再開を制御する因子の探索
概要:

正常な哺乳類の網膜では神経細胞は新生されていないと考えられているが、近年の研究で、傷害を受けて視細胞などの神経細胞が死ぬと網膜内のミュラーグリア細胞の一部が細胞周期を再開して網膜前駆細胞と共通のマーカーを発現し、分裂後に神経細胞に分化できることが報告されてきた。傷害された網膜にWntなどの増殖促進因子を加えるとミュラーグリア細胞の増殖を促進できるが、これまでに報告されているミュラーグリア細胞の増殖促進因子はいずれも正常な網膜ではミュラーグリア細胞の増殖を開始できないため、傷害に伴う何らかの変化がミュラーグリア細胞の細胞周期再開に必要と考えられる。
私たちはマウスの系統間で傷害後に増殖するミュラーグリア細胞の数が異なることを見つけ、ミュラーグリア細胞の増殖しやすさの差から細胞周期再開を制御する因子の探索を行った。C57BL/6(B6)マウスと129x1/SvJ(129)マウスを比較すると、網膜傷害後にBrdUを取り込むミュラーグリア細胞の数は129マウスで有意に多く、GSK3阻害剤を添加すると129マウスではミュラーグリア細胞の増殖が促進されるのに対し、B6マウスの網膜ではミュラーグリア細胞の増殖には影響が見られなかった。網膜前駆細胞のマーカーとして知られるPax6とChx10共陽性の細胞はB6、129どちらの系統のマウス網膜でも傷害後に見られたため、B6マウスでは細胞周期の進行が強く阻害されていると考えられた。ミュラーグリア細胞の増殖しやすさがどのような遺伝子によって制御されているのかを調べるためにB6マウスと129マウスの傷害後網膜の遺伝子発現をマイクロアレイで比較したところ、それぞれのマウス網膜で特異的に発現が上昇する遺伝子をいくつか同定し、またミュラーグリア細胞が増殖しにくいB6マウス網膜では自然免疫系を作動させるToll様受容体(TLR)のうちTLR4に関わる遺伝子群の発現が高くなることを見つけた。傷害網膜にTLR4のリガンドであるLPSを加えるとBrdU陽性ミュラーグリア細胞の数が減ることから、TLR4を介したシグナルがミュラーグリア細胞の増殖を抑制している可能性を考え、現在機能解析中である。またこの結果から他の自然免疫系のシグナルがミュラーグリア細胞の増殖に関わるかどうかのスクリーニングを行い、ミュラーグリア細胞の増殖を促進させる傾向があったTLR3に関しても解析を行っている。

世話人: ○渡辺 すみ子(再生基礎医科学寄付研究部門・特任教授)
 三宅 健介(感染遺伝学分野・教授)
開催日時: 2013年5月1日 16:00-17:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 1号館 2階 セミナー室
講師: 菊地 正 博士
所属: 先端医療研究センター 感染症分野
演題: 獲得免疫機能およびウイルス側の抗自然免疫戦略から見たHIV-1感染者の病態
概要:

抗ウイルス療法の進歩により、血中ウイルス量を臨床的な検出感度以下まで制御することが可能となり、HIV感染症/AIDSによる死亡者は激減した。しかし、これまでに有用なワクチンは開発されておらず、宿主―病原体相互作用の理解に基づき、新たな機序の薬剤の開発や、Functional Cure(免疫学的介入などにより抗ウイルス薬なしにウイルスを制御する)に向けた研究の重要性は増している。
(1) 抗ウイルス薬の服用無しに、長期間血中ウイルス量を検出限界以下に抑制できる患者群が存在し、エリートコントローラー(EC)とよばれ、Functional Cureの自然モデルと考えられている。特定のHLA class Iなどの宿主免疫学的因子とともに、ウイルス学的因子(あるいは逃避変異によるウイルスのフィットネスの低下)がウイルス抑制に関連していることが近年報告されてきた。演者は、宿主の内因性免疫機構APOBEC3Gを分解に導くことで感染性を維持するHIV-1アクセサリー蛋白Vifに注目し、EC由来Vifの抗APOBEC3G活性が低下していることを明らかにした。Vifをターゲットとする薬剤やワクチンの臨床的意義を支持する結果と考えられ、今後、ウイルス自然抑制における宿主側因子とVifやその他のウイルス側因子との関連をより詳細に明らかにする必要がある。
(2) 2009年にパンデミックを起こしたインフルエンザ(H1N1)2009は、免疫抑制状態にある成人のインフルエンザワクチンによるプライム効果とブースト効果を解析できる希有な機会となった。医科研附属病院に通院するHIV感染者におけるインフルエンザ(H1N1)2009不活化ワクチンに対する中和抗体価を2年にわたって解析した。この抗体反応に関わる因子などについても考察する。

世話人: ○東條 有伸(分子療法分野・教授)
 岩本 愛吉(感染症分野・教授)
開催日時: 2013年4月15日 11:00-12:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 病院A棟 8階 南(小)会議室
講師: 醍醐 弥太郎
所属: 滋賀医科大学医学部 臨床腫瘍学講座・教授
演題: がんの分子病態に基づいた創薬開発研究
概要:

近年、新規の抗がん剤、分子標的治療薬が開発されて一部のがんに対して一定の臨床的効果を認めているが、一方で肺がん等をはじめとする難治性がんによる死亡数は年々増加しており、既存の診断・治療法のみでは十分とは言えないのが現状である。そこでがんの標準治療に加えて適切な緩和医療の導入、医療連携によるQOLの向上、創薬研究の推進による新薬等の選択肢の提供を包括した希望の切れ目のない総合的がん医療が必要となっている。
私たちは難治性がんの発生・悪性化の機構を分子病態の面から解析して、発がんリスクや早期がんを診断する、もしくは治療開始前にその効果や予後を予測し最適な治療を選択する個別化医療の開発研究を進めるとともに、新しい分子標的治療薬やがん免疫療法の開発研究に取り組んでいる。これまでに独自に構築した網羅的遺伝子発現解析システムと7がん種3600症例からなる組織マイクロアレイ、ハイスループット血清ELISA、高速大量ゲノムタイピングシステム等を用いたゲノム包括的遺伝子構造・発現解析やプロテオーム解析により、ヒトの各種がんの発生に関わり診断バイオマーカー・治療標的となるoncoantigenやがんの遺伝素因と薬物療法感受性を規定する遺伝子を同定し、機能解析を進めている。これらの診断応用においては、肺がん、食道がん等の早期がん検出、予後予測、抗がん剤感受性診断に有用な組織・血清バイオマーカーを複数同定している。また、肺腺がん群と非がん群、計約13000例のDNAサンプルを用いてゲノムワイド関連解析を行い、肺腺がんの発症リスクに関わるTP63等の複数の遺伝子座位を同定しており、これらの情報を統合した生命予後の延長に寄与しうるがん病態診断システムの構築を進めている。
一方、私たちは、がん細胞で特異的に活性化された複数のoncoantigenが、急速な分裂と形質転換を続けながら生存するがん細胞の緻密なゲノム動態制御や増殖シグナルを担うこと、さらにその経路の選択的遮断が、がん細胞の致死的ゲノム不安定化や細胞死を効果的に誘導することを明らかにしており、これらの分子を標的とした分子療法や免疫療法の開発を進めている。創薬に向けた取り組みのひとつとして、これまでにCTLを誘導可能な複数のoncoantigen由来のペプチド抗原を用いて、肺がんを対象としたがんワクチン療法臨床試験を実施して臨床的有効性を検討している。また、ICH-GCP(医薬品の臨床試験の実施に関する基準の国際ガイドライン)に準拠した医師主導型治験の実施体制を構築して、標準治療に不応の非小細胞肺がんを対象にがんワクチン療法の第II相臨床試験を実施中であり、その個別化医療に向けたコンパニオン診断薬の開発も進めている。本セミナーでは、体系的解析を通して見えてきたがんの分子病態とそれらを標的とした診断・治療法の臨床展開について紹介したい。

世話人: ○今井 浩三(附属病院病院長、特任教授)
 東條 有伸(分子療法分野・教授)
開催日時: 2013年4月16日 14:00-15:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 合同ラボ棟 3階 セミナー室
講師: 阪上 起世
所属: University of California, Los Angeles, Jules Stein Eye Institute Assistant Researcher
演題: Activation of Hedgehog signaling pathway in the developing neural retina stimulates proliferation and disrupts optic fissure closure.
概要:

※このセミナーは都合により中止となりました。This seminar has been cancelled.

The mature vertebrate neural retina originates from the anterior neural plate and consists of six major types of neuronal and glial cells and is an excellent system for studying neuronal differentiation. Accumulating evidence indicates that proliferation and cell fate specification of neural progenitor cells are regulated by both cell-intrinsic factors and cell-extrinsic cues. Among the known cell-extrinsic cues, the Hedgehog (Hh) family of molecules has been shown to regulate neural tissue patterning, cell proliferation, laminar organization, and neuronal differentiation in the vertebrate retina. We reported conditional knockout of Smoothened (Smo), a receptor component of Hh signaling, which shows reduction of progenitor cell pool and increased retinal ganglion cell production in the embryonic retina. For gain-of-function experiments of Hh signaling, Rosa26-SmoM2 (R26-SmoM2) mice were crossed with Cre driver mice. SmoM2 mutant shows enhanced proliferation and abnormal differentiation in the embryonic retina. Immunohistochemistry also revealed disrupted optic fissure closure, which mimics human coloboma. Current our goal is to understand mechanisms of the Hh signaling regulating eye and retinal development, and that when disrupted, lead to a congenital eye disease.

世話人: ○渡邉 すみ子(再生基礎医科学寄付研究部門 特任教授)
 大津 真(ステムセルバンク 特任准教授)
開催日時: 2013年6月14日 16:00-17:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 1号館 2階 会議室
講師: 合山 進 先生
所属: シンシナティ子供病院・リサーチフェロー
演題: ヒト白血病モデルが明らかにする新たな治療戦略
 -Suppressing a tumor suppressor RUNX1-
概要:

近年の遺伝子操作技術と免疫不全マウスの発展は、ヒト細胞を用いた腫瘍モデルの作製を可能にしました。我々の研究室ではヒト臍帯血に 白血病遺伝子を導入して様々なヒト白血病モデルを作製し、病態解明に用いています。
転写因子RUNX1 は骨髄系腫瘍においては癌抑制遺伝子として働くことが知られており、いくつかのマウスモデルでRunx1の欠失が骨髄性白血病の発症を促進することも示されています。ところがヒト白血病モデルを用いた解析では、RUNX1の機能を抑えることによりヒト白血病細胞の増殖、生存が低下することが判明しました。実はRunx1欠失マウス白血病細胞ではFamily遺伝子であるRunx2の発現が上昇しており、これがRunx1の欠失を代替しているものと考えられます。興味深いことに、一部の白血病細胞はinhibitorやshRNAを用いたRUNX1機能阻害に極めて感受性が高く、RUNX1はこれらの白血病のよい治療標的になると考えられます。
本セミナーでは、tumor suppressor RUNX1が持つ“生存因子”としての役割について、ヒト白血病モデルの解析結果を中心に解説します。また、ヒト白血病モデルを用いたその他の応用例も紹介し、将来的な研究展望についても述べたいと思います。

(英文)
RUNX1 is frequently mutated and is considered a tumor suppressor in myeloid neoplasms. However, RUNX1 mutations are not found in core-binding factor (CBF) leukemia and MLL-fusion leukemia, raising the possibility that RUNX1 could actually promote the growth of these leukemia cells. Using human-cell based models, we show that human CBF and MLL-fusion leukemia cells depend on RUNX1 activity for efficient growth and survival. Using a mouse genetic model, we also show that combined loss of Runx1/Cbfb inhibits leukemia development induced by MLL-AF9. The loss of RUNX1 can be compensated by RUNX2, and the survival effect of RUNX1 is mediated by BCL2 in MLL-fusion leukemia. Our study unveiled a prosurvival role for RUNX1 in myeloid leukemogenesis.

世話人: ○北村 俊雄(細胞療法分野・教授)
 服部 浩一(幹細胞制御領域・特任准教授)
開催日時: 2013年4月17日 15:30-16:30
開催場所: 東京大学医科学研究所 2号館 2階 小講義室
講師: Dr. Hiromi Kubagawa
所属: アラバマ大学・教授
演題: What we have learned so far about the IgM Fc receptor (FcμR)?
概要:

Immunoglobulin M (IgM) is the first Ig isotype to appear during phylogeny, ontogeny and immune responses and plays as a first line of host defense to pathogens. Two forms of IgM exist: monomers bound to the membrane of B lymphocytes and mostly pentamers secreted by plasma cells. The importance of both pre-immune “natural” IgM and antigen-induced “immune” IgM antibodies in immune responses to pathogens and self-antigens has been firmly established through studies of a mouse strain lacking the secretory exon of IgM. Naïve B cells in these mutant mice express surface IgM and, following antigenic challenge, can undergo switching to other Ig isotypes and secrete IgG, IgA and IgE antibodies. However, these mice cannot control viral, bacterial and fungal infections due to lack of serum IgM and the unexpectedly inefficient induction of protective IgG antibody responses. Intriguingly, the auto¬immune pathology associated with IgG auto¬antibodies is exacer¬bated in these mutant mice, possibly due to the absence of protective natural IgM antibodies, resulting in impaired clearance of autoantigen-expressing apoptotic cells by phagocytic cells. Notably, many immunological abnormalities in these mutant mice are amelio¬rated by passive administration of polyclonal IgM preparations. Secreted IgM is thus protective in both infections and autoimmune processes. Effector proteins interacting with the Fc portion of IgM, such as complement, comple¬ment receptors and agglutinins or lectins, have thus been proposed, but fail to fully account for the IgM-mediated regulation of immune responses to pathogens and self-antigens. In particular, the role of an Fc receptor for IgM (FcμR) in effector function was completely unexplored until our recent identification of FcμR in both humans and mice. During my seminar, I will cover the cellular and biochemical nature of FcμR, the over-expression of FcμR in patients with chronic lymphocytic leukemia and the phenotype of Fcmr deficient mice.

世話人: Dr. Hiromi Kubagawa
開催日時: 2013年4月5日 17:00-18:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 1号館 2階 セミナー室
講師: 大津 真 博士
所属: 幹細胞治療研究センター ステムセルバンク
演題: 幹細胞治療研究の移植医療への応用と実践
概要:

造血細胞移植は血液悪性疾患や先天性免疫不全症等の難病における根治療法として行われているが、安全性がより強化され、かつ有効性に優れた理想的治療法の確立が待望されている。この実現を目指して、私はアデノシンデアミナーゼ欠損症における遺伝子治療の臨床研究以来、一貫して造血幹細胞、最近ではiPS細胞を用いた基礎研究を展開してきた。安全性強化面では主に前処置毒性の軽減を実現すべく、放射線照射や化学療法剤に依らない移植法開発研究を行い、同種T細胞のアロ反応が、骨髄ニッチに十分な空隙を作製する能力を有することを示し、cellular conditioningの概念を提唱するに至った。有効性強化を目指す研究においては、造血幹細胞活性のex vivoおよびin vivoでの温存/増強に主たる重点を置き、特にSDF-1/CXCR4シグナルの役割、炎症性サイトカインの影響を中心にいくつかの新たな知見を得ることに成功しており、既に臨床応用への道筋を描いている。本セミナーにおいては、特に臨床応用の実現可能性の高い研究内容を中心に紹介し、実際の治療実現についての近未来を展望する。また一昨年来、制度および運営体制の整備を進めてきたステムセルバンクについての今後の事業展開に関しても、その展望につき短く触れることとしたい。

世話人: ○東條 有伸(分子療法分野・教授)
 中内 啓光(幹細胞治療分野・教授)
開催日時: 2013年4月12日 16:30-18:00
開催場所: 東京大学医科学研究所 1号館 2階 セミナー室
講師: 鍔田 武志
所属: 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 免疫疾患分野 
医歯学総合研究科生命理工学系専攻 免疫学分野 教授
演題: BCR共受容体と自己免疫
概要:

Bリンパ球抗原受容体シグナル伝達は種々の抑制性共受容体によって制御されることが明らかとなっている。CD72は細胞外領域にC型レクチン様ドメインを有する抑制性 BCR共受容体の1つで、もっぱらB細胞に発現する。CD72には多型が存在するが、CD72多型はMRL/lprマウスでの自己免疫疾患の発症に関わる。Faslpr変異はMRL/lpr マウスでの自己免疫疾患の発症に重要であるが、C57BL/6やC3Hバックグラウンドでは自己免疫疾患をおこさない。MRLのCD72アリルであるCD72cは、他のアリルに比べてBCR抑制機能が弱く、C57BL/6. CD72c /lprコンジェニックマウスではSLE様の自己免疫疾患を発症する。この結果から、CD72cがMRL/lprマウスでの自己免疫疾患発症に関わるMRLバックグラウンド遺伝子であり、CD72が自己免疫疾患発症を制御することが示唆される。一方、CD22も細胞外領域にレクチンドメインを持つもっぱらB細胞で発現する抑制性BCR共受容体である。CD22はBCR架橋の際にもっとも強くリン酸化される分子の1つで、CD72に比べて強くCa2+シグナルなどBCRシグナル伝達を制御し、さらに、TLRリガンドへの応答を増強する。しかしながら、CD72欠損マウスがSLE様自己免疫疾患を自然発症するのに比べ、CD22欠損マウスは顕著な自己免疫疾患を発症しない。レクチンドメインが認識するリガンドの違いにより、このような機能的差異が生じると考えられる。

世話人:  清野 宏(炎症免疫学分野 教授)
○三宅 健介(感染遺伝学分野 教授)