東京大学医科学研究所

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学友会セミナー

最新の学友会セミナー

開催日時: 2019年10月28日 16:00 ~ 17:00
開催場所: 2号館 小講義室
講師: 片岡 直行
所属: 東京大学大学院農学生命科学研究科 応用動物科学専攻 
細胞生化学研究室 准教授
演題: RNAプロセシング異常に起因する疾患「RNA病」
—その原因解明と治療への挑戦—
概要:

高等真核生物では、ゲノムDNA上の遺伝情報が、タンパク質として発現するまでに様々な過程が存在する。ゲノムDNAから転写されてできたmRNA前駆体は、核内で様々なプロセシングを受けて成熟mRNAとなった後、核から細胞質へと輸送され、タンパク質合成の鋳型として機能する。これらの過程はRNAプロセシングと呼ばれ、遺伝子発現に必須な過程である。このうちのイントロンを除去し、エクソンを連結する反応、mRNAスプライシングは、精巧かつ複雑な調節を行うことの出来る過程であるが、精巧であるが故に、この過程に異常をきたすことで疾患が引き起こされる例が数多く報告されている。
最近、このようなRNAおよびRNAプロセシング異常に起因する疾患は「RNA病 (RNA diseases)」と総称され、その解析が急速に進んでいる。本セミナーでは、mRNAスプライシングの機構と、その異常によって引き起こされるRNA病の幾つかを取り上げ、その原因となる異常スプライシング機構の解明と治療に向けた戦略について解説する。

世話人: 〇中井 謙太 (機能解析イン・シリコ分野)
 高橋 理貴 (RNA医科学 社会連携研究部門)
開催日時: 2019年10月10日 16:00~17:30
開催場所: 病院8階(北)大会議室
講師: 泉屋 吉宏
所属: カリフォルニア大学デイビス校医学部・教授
演題: ポスドクを始めて現在に至るまでの軌跡;アメリカの研究大学の仕組み
概要:

自分は日本の研究者の方々の研究を大変尊敬しております。離れた土地から同じような仕事をしつつ日本を見たときに、その独創的な仕事や限られた研究費を用いてレベルの高い研究を行うシステムには感動を覚えますし、日本人であることに常に誇りを感じています。それと同時に、その原動力となっている 先生方の苦労は如何程なのかとも感じます。それを見ながら日々研究されている大学院生、ポスドクの方々は、それなりに将来に不安をお持ちなのでは無いでしょうか。
アメリカの大学の教授には数多くの中国人、台湾人、インドからの研究者がいらっしゃいます。研究のレベルの高さやノーベル賞の数を考えると、もう少し日本人の先生がいても良いのかなと常に感じております。実際にアメリカの大学では日本人のポスドクは優秀だから来て欲しいと考えている研究室が殆どです。民度の高さ、仕事の繊細さ、生真面目さがその理由です。それが理由で日本人は少し損をしている様にも感じます。
この度は皆様と同じように日本で博士を頂いて、 自分の様な人間がどの様にして現在の職まで至ったかをお話することで、 海外にもチャンスが転がっていることや、こちらで独り立ちする場合の少しばかりの注意事項を 知って頂きたいと思います。アメリカでの仕事内容、こちらの研究大学の仕組み、NIH研究費審査のあり方、給与体系、大学でのSearch Committeeの実情、テニュアトラックの実際に意味することなどを自分の経験を踏まえながらご紹介したいと思います。高く見える敷居も、実際はそれ程でも無いことを紹介できればと思います。
最後に自分の研究室で行っているカポジ肉腫ヘルペスウイルスのmini-chromatinを利用した遺伝子転写の研究紹介と、どの辺りが他のヘルペスの研究者と違って現在のNIH R01sの研究費に繋がっているのか、また違わせようとしているのかをご紹介できればと思います。

世話人: 〇川口 寧 (ウイルス病態制御分野)
 河岡 義裕 (ウイルス感染分野)
開催日時: 2019年9月20日 16:00 ~ 17:30
開催場所: 病院棟8階小会議室
講師: David I Watkins
所属: Professor, Department of Pathology,
University of Miami Medical School, USA
演題: Neutralizing monoclonal antibodies to prevent and treat Zika, dengue and yellow fever virus infection.
概要:

Nearly one billion people are at risk of wild type yellow fever infection (wtYFV), and up to 50% of the symptomatic wtYFV-infected patients will die. Most of the world, and the US, are vulnerable to mosquito-transmitted diseases, as shown by the emergence of two related Flaviviruses, dengue (DENV) and Zika (ZIKV). Our laboratory has assembled several Flavivirus-specific neutralizing monoclonal antibodies (nmAbs). We have already shown that these mAbs can be used for the prevention and treatment of Flaviviruses and have demonstrated that ZIKV infection can be prevented in Indian rhesus macaques by using a cocktail of nmAbs. More importantly we have also showed that this nmAb cocktail can reduce viral load to undetectable levels in ZIKV-infected pregnant macaques. Post-infection treatment with nmAbs can, therefore, reduce Flavivirus replication in a relevant non-human primate (NHP) model. We are proposing to build on our earlier work to create novel nmAb-based preventative and therapeutic approaches to both prevent wtYFV infection and to reduce viral replication after infection. These nmAbs could play an important role in ameliorating suffering from this fatal virus by preventing virus-induced morbidity, transmission, and the high mortality rate of this disease. Furthermore, these nmAbs might also prevent vaccine-induced mortality, increasing the safety and therefore, the palatability of the YFV17D vaccine for the population.

世話人: 〇俣野 哲朗 (エイズワクチン開発担当)
 四柳 宏 (感染症分野)
開催日時: 2019年9月25日 15:30 ~ 16:30
開催場所: 総合研究棟8F大セミナー室 (入口にて内線75615, 75617 or 75618に電話下さい。解錠します。)
講師: Jiangning Song
所属: Monash Biomedicine Discovery Institute (BDI), Monash University, Australia・Associate Professor and Group Leader
演題: DeepCleave: a deep learning-based approach and tool for more accurate prediction of protease-specific cleavage sites
概要:

Proteases are enzymes that cleave and hydrolyse the peptide bonds between two specific amino acids of target substrate proteins. Protease-controlled proteolysis plays a key role in the degradation and recycling of proteins, which is essential for various physiological processes. Thus, solving the substrate identification problem will have important implications for the precise understanding of protease functions and their physiological roles, as well as for therapeutic target identification and pharmaceutical applicability. Consequently, there is a great demand for bioinformatics methods that can predict novel substrate cleavage events with high accuracy from sequence information. In this talk, I will describe DeepCleave, which is the first deep learning-based predictor for protease-specific substrates and cleavage sites. It uses protein substrate sequence data as input and employs convolutional neural networks with transfer learning to train accurate predictive models. High predictive performance of the DeepCleave models stems from the use of high-quality cleavage site features extracted from the substrate sequences through the deep learning process, and the application of transfer learning, multiple kernels and attention layer in the design of the deep network. Empirical benchmarking tests against several related state-of-the-art methods demonstrate that DeepCleave outperforms these methods in predicting caspase and matrix metalloprotease substrate-cleavage sites. In addition, I will briefly introduce several other bioinformatics tools we develop that might be of interest.

世話人: 〇井元 清哉 (健康医療データサイエンス分野)
 渋谷 哲朗 (シークエンスデータ情報処理分野)
開催日時: 2019年9月5日 17:30 ~ 18:30
開催場所: 4号館3階 国際粘膜ワクチン開発研究センターセミナー室
講師: 小山 正平
所属: 大阪大学大学院 医学系研究科 呼吸器免疫内科学
大阪大学免疫学フロンティア研究センター・助教
演題: 肺癌免疫微小環境の理解~トランスジェニックマウスモデルから臨床検体へ~

概要:

腫瘍免疫微小環境は、免疫療法に対する感受性だけでなく、殺細胞性抗がん剤や分子標的薬治療などの治療効果・耐性化などにも関与している可能性があり、遺伝子変異の集積や免疫細胞の浸潤など様々な因子から形作られる。私達は、担がんマウスモデルとして細胞株を移植するシンジェニックモデルおよび遺伝子変異を組み込むことで発癌誘導するトランスジェニックモデルの両者を用いて、主に肺癌・多形膠芽腫の腫瘍微小環境に関して、抗PD-1抗体に対する感受性と合わせて検討してきた。前半では、抗PD-1抗体をはじめとする免疫チェックポイント阻害薬への感受性・耐性化という観点から最近の海外からの報告を含め紹介する。後半では、私達が、マウスモデルおよび臨床検体解析の比較によって見出した知見のうち代表的な2つ、Kras変異陽性Lkb1欠損肺癌モデルおよび多形膠芽腫モデル(脳腫瘍モデル)、と臨床検体を用いた大阪大学グループでの取り組みについて紹介する。

世話人: 〇石井 健 (ワクチン科学分野)
 Cevayir Coban (マラリア免疫学分野)
開催日時: 2019年9月6日 15:30 ~ 17:00
開催場所: 2号館小講義室 
講師: 佐藤 荘
所属: 大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 自然免疫学・准教授
Innate Cell Therapy Co., Ltd.・CSO
演題: 疾患特異的マクロファ-ジの機能的多様性
概要:

マクロファージはその発見以来100年以上もの間、一種類の細胞しかないと考えられており、サブタイプが複数ある他の免疫細胞と比較すると日陰の存在であった。しかし近年、徐々に再度スポットライトが当てられ始めている。
その中でも、最近のトピックの1つとして、M1・M2マクロファ-ジが挙げられる。しかし、私たちはマクロファ-ジはM1・M2ではなく更に詳細なサブタイプに分かれると仮定して研究を行った。その結果、アレルギ-に関わるサブタイプはJmjd3により分化する事*1、またメタボリックシンドロ-ムに関与するサブタイプはTrib1より分化する事を突き止めた*2。これらの研究から、現在私たちは病気ごとの“疾患特異的マクロファ-ジ”が存在している可能性を考えている。
新たな疾患特異的マクロファ-ジを探索するために、線維症に着目した。線維化初期に患部で増えるマクロファ-ジについて解析を行ったところ、Ly6C-Mac1+分画の一部の細胞が、線維症の発症に必須である事を突き止めた。この細胞の形態的特徴を解析したところ、2核様の形態をとっていたので、Segregated nucleus atypical Monocyte (SatM)と名付けた*3。 現在はこの細胞に影響を与える非免疫系因子の研究も行っている。
このように、私たちの体には未だ見つかっていない“疾患特異的マクロファージ”が存在しており、各々が対応する疾患が存在していると考えられる。これらの疾患特異的な細胞を標的とした創薬は、その疾患特異性の高さから、副作用の少ない創薬応用につながることが期待される。

【参考文献】
(1) Satoh T., et al, Nat Immunol. 2010 Oct;11(10):936-44.
(2) Satoh T., et al, Nature. 2013 Mar 28;495(7442):524-8.
(3) Satoh T., et al, Nature. 2017 Jan 5;541(7635):96-101

世話人: 〇北村 俊雄 (細胞療法分野)
 三宅 健介 (感染遺伝学分野)
開催日時: 2019年9月5日 16:00 ~ 17:00
開催場所: 2号館小講義室 
講師: 片山 義雄
所属: 神戸大学医学部附属病院血液内科・講師
演題: 研究の一スタイルとしてのフーダニット(who done it)
概要:

私は、研究には大きく分けて2通りあると考えています。一つは、コロンブスのように誰も手をつけていない土地や領域を求め、未開のジャングルに分け入って行く探検のような研究。もう一つは、皆の眼に同じように見えている場面の中で、視野には入っていながら人の気付かない箇所に気付いてそれを掘り下げていく、刑事コロンボのような熟練の刑事の仕事、いいかえればフーダニット(ミステリ小説で言う真犯人探し who done it)の研究。私は、前者に携わる機会がこれまでにありませんでしたが、幸い後者の研究スタイルに強いこだわりを持つ師に臨床、基礎とも恵まれてきました。そこで学んだことが二つあります。「興味の対象を理解するために興味の対象外を知る事」の重要性と、「現場が発するかすかなサインから見えない全体を読み取る想像力(妄想力)」の強みです。私がこれまで携わって来た研究論文の中で、小さな血液臨床のケースレポートから何年もかかった基礎研究まで、体験して来たフーダニットの例を未解決事件も含めてご紹介することで、研究との付き合い方を皆さんと議論してみたいと思います。
議題
• 骨髄が壊死すると骨も壊死する一蓮托生:骨髄は独立した臓器なのか?
• 造血幹細胞は迷子になったり家を追い出されたり忙しい:造血幹細胞は自分の意志で自分の居場所を決められるのか?
• 造血幹細胞に影響を与える骨髄中の細胞:そもそも造血幹細胞に影響を与えない細胞は骨髄中に存在するのか?
• 骨髄疾患の教科書的常識は何かが変?:骨髄線維症の真犯人説

世話人: 〇北村 俊雄 (細胞療法分野)
 岩間 厚志 (幹細胞分子医学分野)
開催日時: 2019年8月6日 17:00 〜 18:00
開催場所: 病院棟8階 小会議室
講師: 齋藤 真
所属: Centre for Tropical Medicine and Global Health, Nuffield Department of Medicine, University of Oxford, UK
演題: 妊婦における熱帯熱マラリアの治療
概要:

マラリアは熱帯地域における主要な致死的感染症である。妊娠中はマラリアに対する脆弱性が高まり、また、胎児に対しても蓄積的に悪影響を及ぼすことが報告されている。妊娠による免疫調整や生理的薬物動態変化に加え、熱帯熱マラリアではマラリア原虫が胎盤に感染するという特徴的な病理があるため、妊婦に対する治療を非妊婦への治療の単純な延長線上に捉えることは必ずしも適切とは限らない。一方で、一般的に妊婦は臨床試験から除外されることが多いため、病態の理解やエビデンスの蓄積がさらに困難となっている。メタ解析は医学において最も高いレベルのエビデンスであるという共通認識が形成されてきているが、いわゆるコクラン型のメタ解析はランダム化比較臨床試験のみしか解析に含めることができないという限界を有している。本セミナーでは個々の臨床試験参加者のデータを用いたメタ解析(individual patient/ participant data meta-analysis)の手法を用いて、妊娠中の熱帯熱マラリアへの治療に関するエビデンスの集積を行った研究結果及びその手法について紹介する。

世話人: 〇北村 俊雄 (細胞療法分野)
 東條 有伸 (分子療法分野)
開催日時: 2019年8月23日 14:00 ~ 15:00
開催場所: 2号館 小講義室
講師: Constance Alabert
所属: University of Dundee, Center of Gene Regulation and Expression
Principal Investigator
演題: Restoration of chromatin based information behind replication forks
概要:

Epigenetic states defined by chromatin must be maintained through mitotic division during cell propagation. Using Nascent Chromatin Capture coupled to quantitative mass spectrometry we showed that post-translational modifications (PTMs) are diluted twofold upon DNA replication, as a consequence of new histone deposition (Alabert et al. 2015). We could observe that for most of PTMs, the pre-replication state is restored by new histones being modified to mirror the parental histones. However, H3K9 trimethylation (H3K9me3) and H3K27me3 are propagated by continuous modification of parental and new histones (Alabert et al. 2015). Here we report that parental histones are important to promote PTM restoration on new histones. Our data further reveal that newly synthesized histones and recycled parental histones are not processed by similar mechanisms. Consequently, restoration of PTMs on new histones must be executed on time upon their assembly in order to maintain PTMs level in cycling cells. Together, our results highlight the importance of the PTM restoration program in cycling cells.

世話人: 〇中西 真 (癌防御シグナル分野)
 岩間 厚志(幹細胞分子医学分野)
開催日時: 2019年8月9日 16:00 ~ 17:00
開催場所: 4号館3階 国際粘膜ワクチン開発研究センター セミナー室
講師: 神戸 直智
所属: 関西医科大学 皮膚科 准教授
演題: NOD2の機能獲得変異によって肉芽腫を形成する自己炎症
概要:

我々は,臨床での患者との出会いを契機として,細胞内パターン認識受容体であるNLRファミリー分子が関わる2つの自己炎症症候群の解析に従事している。1つはNLRP3の変異によって組織学的には好中球浸潤を伴う蕁麻疹様の皮疹を特徴とし,IL-1βの中和抗体が奏功するクリオピリン関連周期熱症候群(CAPS,指定難病106)であり,もう1つはNOD2の変異によって皮膚と関節,眼に肉芽腫をきたすブラウ症候群(指定難病110)である。常染色体優勢遺伝を示すブラウ症候群で同定されるNOD2変異は,CAPSでのNLRP3変異と同様にNOD領域に認められ, HEK293細胞に強制発現させNF-κBのレポーターアッセイを行うと機能獲得型変異であると考えらえる。さらに我々は患者からiPS細胞を樹立し,これを単球へと分化誘導して検討すると,NOD2はIFNγによって誘導され,このとき変異NOD2を発現した細胞のみMDPの添加なしに,NF-κBの転写亢進と炎症性サイトカインの産生が確認された。この現象は,患者から分離した末梢血をマクロファージへと分化誘導した細胞でも確認された。しかしながら,なぜNOD2の機能獲得型変異をもった細胞が,皮膚と関節,眼に肉芽腫を作るのか,そこにどのような機序が関わっているのかは不明である。

世話人: 〇三宅 健介(感染遺伝学分野:教授)
 石井 健 (ワクチン科学分野:教授)