東京大学医科学研究所

  1. ホーム
  2. 医科学研究所の紹介■所長メッセージ

所長メッセージ

創立記念シンポジウム所長挨拶

2011年06月01日

1. ご挨拶と震災での医科研への影響と復興への関わり
本日は、医科研創立記念行事にご参加いただき、ありがとうございます。本年度のシンポジウムには、ただ単に1892年に設立された当研究所の前身である伝染病研究所から現在の医科学研究所に変遷してきた歴史を振り返り、その基盤の下に、現在そして未来の医科学研究を見つめ、議論する機会だけではなく、もう一つの大きな意味があると考えています。
今年は3月11日に発生した東日本大震災により、東北地方は甚大な被害を受け、東大においても、岩手県大槌町の大気海洋研究所の施設が壊滅的な被害を受けました。
幸い医科研において大きな被害はなく、無事今年も創立記念日を迎えることができましたが、医科研としても被害を受けた方々、自治体の支援にさまざまな形で乗り出しました。
例えば、医科研においては、国立大学共同利用・共同研究拠点として2010年度より新たな活動を始めておりますが、震災を受け、直ちに研究者間のネットワークを通じ関係研究機関の研究者の被災状況を調査し、被災した研究者の研究実施及び継続を支援するための「共同研究(被災研究者支援)」の検討を行い、4月からウェブサイト等を通じて募集を開始しております。
また、医科研教職員による、現地での直接的な被災地支援や都民ボランティアへの参加、医学部附属病院と協力しての医療支援チームの派遣、被曝者の治療のための医科研被曝医療チームの結成等の活動の他、毎月開催している市民公開医療懇談会において、放射能被曝に関する正しい知識を伝える講演や被災地支援に実際に参加した方たちの体験を伝えてまいりました。
今後も最先端医科学を推進する研究所として、継続して支援活動を続けながら、一方で同時に、我々は科学者として、新たな発見の前に立ちはだかる困難に果敢に立ち向かう「Spirit of Scientists/科学者魂」を発揮していかなければならないと考えています。"Show the Spirit of Scientists"です。このような歴史的国難に際し、我々国民一人一人が、日本人として自分たちが得意とする、または専門とする領域において、最大限の努力を発揮することが重要だと思っています。本日、お集まりいただいた皆様方とご一緒に、"Show the Spirit of Scientists"を発揮することで、医科学研究所の最大の強みである、医科学分野での最先端の基礎・臨床研究を推進することが、日本の復興へ最大限の貢献ができると考えています。その観点からも本日のシンポジウムは、その証として重要な位置付けにあります。

2. 伝染病研究所・医科研120/45周年を控えて
さて、皆様ご存じのとおり、伝染病研究所設立から数えて来年2012年が120周年にあたります。さらに、日本が先進国として成長し、社会が多様化するとともに、国民の皆様の間で問題となる病気も多様化し、感染症だけではなく癌にはじまり他の疾患対策への貢献も含めて、先見性のある素晴らしい先輩達のご努力で医科学研究所に改組されて45年となります。つまり、5年後2017年には、伝研として歩みだしてから、創立125周年そして医科研に改組されて50周年となります。この2つの節目の5年間を新しい医科研の出発点として、研究・事務組織の改組にはじまり、さまざまな取り組みを進めてまいりたいと考えております。それに向けての助走そして第一歩として、本年度の創立記念シンポジウムそして、昨日から始まりました各研究分野の若手研究者を中心とした研究成果発表会は重要な位置付けとなります。
それも踏まえて、本研究所の創立者である北里柴三郎博士の「実学を目指した基礎・臨床研究」つまり、「病気を理解し」「病気を再現し」「病気を予防・治療する」という当研究所の遺伝子に刷り込まれた理念を再確認し、そして来年から始まる東大医科学研究所の次世代を見据えた、つまり"Beyond the Future"に向けての進化、発展に向けての取り組みへの第一弾として、当研究所の創立記念シンポジウム企画・運営委員会では「最先端医療の現状と展望」というテーマのもとに、所内外から最先端基礎医科学研究を基盤として最先端医療に結びつく研究を展開されている先生方の講演を拝聴する機会を企画していただきました。お忙しい中、その趣旨にご賛同いただき学外からは、当研究所とは感染症・免疫・ワクチンという分野をはじめとして、兄弟として、またある意味では医科学の発展にむけて良きライバルとして非常に緊密な関係にある大阪大学微生物病研究所から「ジフテリア毒素変異体を使ってガン増殖と関連のあるEGFを標的とした新規がん治療薬」の開発を目指している目加田英輔教授、そして学内からは「ナノバイオテクノノロジーを医療分野に結びつける先導的研究」を展開され、医工連携のリーダー的存在である本学工学研究科の片岡一則教授をお招きしております。さらに所内からは我が医科学研究所が誇る、癌、感染、免疫、ゲノム、iPS/再生、そして基礎医科学領域で国際的に活躍する研究者群の中から、本年度は今井教授、中内教授、中村(祐)教授に最近の成果をご紹介いただく予定です。
内容は盛りだくさんで興味深いものばかりで、胸がわくわくしてまいりますが、本日ご参加いただいている皆様方からの活発な質問・議論は本シンポジウム成功の鍵を握っておりますので、よろしくお願い申し上げます。最後になりますが、重ねて、本日御参集いただいた皆様方の、最先端医科学研究のメッカとしての当研究所の活動へのご理解とご支援、積極的なご参加をお願いいたしまして、私からの開会の挨拶とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。