東京大学医科学研究所

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所長メッセージ

村上所長就任挨拶

2015年04月01日

所員の皆様、本日はお忙しい中、お集まり頂きまして、誠に有難うございます。
本日、医科学研究所の所長に就任致しました村上善則です。皆様と共に、この新しい年度である平成27年度を迎え、ここでお話できることを大変光栄に思っております。所長就任に当たり、一言、ご挨拶を申し上げたいと思います。

ご承知のように、私は過去4年間、第26代所長である清野宏教授の下で、総務系副所長を勤めて参りました。清野先生のこの4年間の卓越したリーダーシップにより、医科研は今までにも増して活力を増し、新しい時代へ向けて飛躍しつつあります。そこで、私は、清野先生の推し進められた IMSUT One to Gogo Project を継続、発展させていくことを自らの使命と考えております。その詳細は、年毎にめまぐるしく変化する社会情勢に応じて変化するでしょうが、常に時代の先を見据えて自ら進化していくことが、このProject の本質であり、それが医科研の魂、DNAと合致すると思うからであります。所長として見事なリーダーシップを発揮された清野先生に、この場を借りて、改めて心より御礼を申し上げたいと存じます。また、この4年間、経理系副所長として、医科研の財政建て直しに尽力された三宅副所長にも、心から御礼申し上げます。三宅先生のおかげで、医科研のスペースと経理の全貌が明らかになり、問題点を把握し、対応策が取れる状況になりました。また、見事な病院の運営をされた今井前病院長、また小澤現病院長、諸田、紺野両事務部長にも心より感謝申し上げます。

さて、ここで、本日からスタートした新執行部をご紹介いたします。総務系副所長は分子シグナル制御分野教授の武川睦寛先生、経理系副所長はウイルス病態制御分野教授の川口寧先生にお願いすることになりました。共に若く活力に溢れた先生であり、また、准教授として医科研で過ごされた経験ももつ方々です。病院長は引き続き小澤先生がご担当され、所と病院が一体となって、今後の運営に当たって行きたいと思っております。また、事務部長には、分子細胞生物学研究所から植田清実さんが就任されました。この新執行部体制で、部門長会議メンバーである真鍋先生、山梨先生、三宅先生、宮野先生、東條先生、吉田先生とともに、医科研の運営に携わっていくことになりました。加えて医科研には、30名の教授を含む80名の責任研究者、200名のスタッフ研究者、280名の事務職員、210名の病院職員、300名の大学院生など、合計1000名を超えるメンバーがこのキャンパスに集っております。どうか、よろしくお願い申し上げます。

さて、ここにお示し致しますのは、清野執行部の最後、3月の末に出来上がってきたPlatinum West Projectの3次元モデルです。本部のキャンパス委員会委員でもある生産技術研究所の今井秀樹教授に作成していただきました。総重量は50kgを越えて非常に重いのですが、講堂に運んで下さった事務の方々に感謝いたします。いずれにしましても、私自身、このモデルを見て興奮しております。この白金台の高台に聳え立つ素晴らしい未来の医科研、夢が無限に膨らみます。キャンパスや建物、周辺の色は、これから皆さんが思い思いに加えていっていただければと思います。まるで、関東大震災の廃墟から立ち上がって伝染病研究所を再建した先人たちの心意気まで伝わってくるようです。そして、私たちがTeam IMSUTとして一丸となって医科研のミッションを推し進めることができれば、この素晴らしいキャンパスも決して夢ではなく、現実のものになるのだと私は確信しております。

しかし、今日、医科研、またわが国をとりまく状況は、92年前の関東大震災後にも似て混沌としており、激動の只中にあります。東京大学が独立法人化して10年が経過しましたが、国の予算削減、定員削減の方針は継続したままであり、医科研の所と病院の日常活動の根幹を揺るがしかねない事態になっております。現実問題として、予算の確保、教職員のポストの確保、さらには、研究のスペースの確保が、所、病院ともに一段と深刻な問題となりつつあります。こういった中で、日本医療研究開発機構(AMED)が本日からスタートすることは、朗報だと思います。AMEDに所としても積極的に関わりながら、新しい体制に加わって行きたいと思います。私はこのようなピンチに臨んでもなお、医科研が必ずこの危機を乗り越えて、光り輝き続けることができると信じております。それは医科研が、今まで幾多の危機を乗り越えてきた不屈の精神、DNA をもっているからであり、また、あらゆる変化に対応できる多様性を内臓しているからであります。そして、何よりも、常に挑戦し進化し続けることを本懐と考える勇敢な教員、職員の皆さんが、この医科研には集まってくれているからであります。

医科研の最大の魅力は、その多様性、構成員がヘテロな集団であることです。しかも、独創性の高い基礎研究から応用、臨床研究まで、背景、専門領域の異なる先生方が、皆、医科研の主人公として活躍されておられます。サイエンスは今後益々、既存の枠を超えて発展することが予想されますので、医科研のもつこの多様性は極めて重要で強力な特質となると思われます。

医科研のもつ先見性とチャレンジ精神も大きな魅力です。明治中期、全国で年間に18万人もの人が感染症で亡くなっていた時代に創設された医科研は、当初、病原体が主たる標的でした。しかし、第二次世界大戦後、日本の公衆衛生の向上と疾患の変遷に伴って、我々は病原体から遺伝子へと主たる標的を移し、感染症のみの研究から、がん、ゲノム、再生、TRなども取り込んだ現在の形へと、時代の要請に応じて発展、進化させてきました。この先人の先見性に、改めて敬意を表したいと思います。と同時に、21世紀になって15年経過した今、医科研の本質的なテーマについても、検討が必要ではないかと思っています。

わが国唯一の研究所病院を有することも、いうまでもなく大きな魅力です。医科研病院に集う先生方は、既存の医療に従事するだけでも大変なご苦労であるのに加えて、現在の医学では治せない疾患を治すという使命感をもって、さらなる努力をされておられます。しかし、考えてみれば、現在当たり前になっているほとんどの治療法も、歴史のどこかで、偉大な先人達によって新たに確立され、難治性疾患を治癒可能な疾患へと変貌させてきたものですから、我々は、病院の先生方の情熱と努力を誇りとして、所と一体となって病院の発展に努めたいと思います。

また、皆さん納得されると思いますが、白金台キャンパスはが適度な大きさで独立していることもあり、所と病院、各分野の間の障壁が少なく、全員が医科研所員としてのアイデンティティーを共有しやすい環境であることは、職場として非常に素晴らしいことです。創立記念日や病院の同窓会には、退職教職員や卒業生を含め、多数の医科研を愛する人々が参加してくれることは我々の誇りです。清野先生はこれをIMSUT Family と呼ばれましたが、今後とも、IMSUT Family と呼びあえる間柄が、様々な難局を乗り切る際の拠り所となるはずです。

このように、医科研は数々の魅力に溢れた稀有な職場です。そこで、この医科研が先程述べた、人員、予算、スペースの問題を乗り越えて、今後も発展し続けるために、私は以下の課題を最重点課題として、皆さんとともに取り組みたいと思います。
1. 基礎系、臨床系の一流研究者のリクルート
2. 医科研病院のTR病院としての整備、発展
3. 医科研の発展を支援する組織(IMSUT財団)の設立
4. 疾病研究を支援するバイオ・リソース機能の強化と、共同研究拠点としての発展
5. 世界に開かれた医科学研究所として頂点を目指す


まず、研究所と病院の、がん、感染をはじめとする分野について、次世代を担う一流研究者のリクルートを行います。そして、旧来の部門・センターの枠に囚われない連携体制を構築します。

これと並んで重要なことは、難知性疾患に対して、全く新しい治療法を開発し、トランスレーショナルリサーチを進めるという大きな可能性を秘めた医科研病院が、ますます発展できるよう、全面的に支援することです。このような新しい医療の開発には、当然ながら通常以上の人員と予算を必要としますので、困難を伴うことは明らかですが、病院の発展支援は是非とも必要な課題です。このために、今までも、執行部と病院の先生方によるワーキング・グループを立ち上げて対応してきました。新執行部もこれを継承し、医科研病院の発展のための最善の策を模索し続けたいと思います。

さらに病院のみならず研究所全体についても、安定した人員、予算、スペースを確保して、医科研を継続的に発展させることが必要です。このために、清野執行部に引き続き、医科研を支援するパートナー組織としてのIMSUT財団の設立を目指します。これは、前例のない取り組みであり、国立大学法人としての制度面での制限の下で、数多の困難を伴うことが予想されることから、慎重に進める必要があります。しかし、長期的な視点からは、どうしても支援組織が必要であり、IMSUT財団の具体化へ向けて、全力を尽くしたいと思います。

また、4年前に文部科学省の支援を受けてスタートした共同利用・共同研究拠点の中核として、医科研の重要性が益々高まっていることも、我々にとっては誇らしいことです。医科研としても、全国規模の研究拠点活動を通して、巨大科学を推進しようとする機運が高まっています。ご承知のように、医科研はすでに、プロジェクト指向型の研究センターを複数立ち上げて、強化し、学問的にも社会的にも貢献してきました。その成功例の一つがヒトゲノム解析センターであります。医学・生物学の解析に特化したスーパーコンピューターシステムと、世界最大級の疾患バンクであるバイオバンクジャパンを有し、今年度からは、本日設立された AMED の支援を受けて、「疾病克服に向けたゲノム医療実現化プロジェクト」の中核組織として機能する予定です。さらには、実験動物施設や疾患iPS細胞バンク、ウイルス・細菌バンク、化合物ライブラリーなどについても、大規模な共同研究施設を設立、強化する計画です。このような大型共同研究拠点を基盤とした巨大科学の推進は、現在、そして将来にわたる医科研の主要な流れとなると思われます。さらに、東京大学の新しいイニシアティブである東京大学ゲノム医科学研究機構が、本日から始動することになりましたが、医科研はその事務担当部局として貢献することとなりました。この研究機構は、東京大学の卓越した基礎ゲノム科学、ゲノム医科学、情報科学、コンピューター生物学の研究者のみならず、倫理・法・社会的問題に関する指導的研究者をも結集したもので、ゲノム医科学に関係するさまざまな課題や活動について、全国的なレベル向上に大きな貢献をするものと期待しています。このように、学内、国内、さらには海外も含めた新たな共同研究や研究機構を立ち上げ、その中心的役割を担うことが、現在、そして将来の医科研に期待されるさらなる課題だと思われますので、公正な立場から積極的に取り組んでいく覚悟であります。

そして、最後に、「世界に開かれた医科学研究所として頂点を目指す。」これは、IMSUT One to Gogo の究極の目標です。現在、中内啓光教授と河岡義裕教授が、東大のクロスアポイントメント制度を利用して、それぞれ米国スタンフォード大学とウィスコンシン大学の教授として併任されておられ、また、中村祐輔前教授が米国シカゴ大学教授として異動され、活躍されておられることは、医科研全体の大きな誇りです。海外との連携を今まで以上に強化しながら、先生方一人ひとりの研究が、世界の頂点に立つものとなるように、お互いに頑張りましょう。と同時に、クロスアポイントメント制度を利用して、海外のトップクラスの大学や研究所から優秀な研究者や学生を、ここ白金台の医科研に迎え入れることも是非実行したいことです。医科研が、真の意味で、国際的なトップクラスの研究所となる日が、最初に示した3次元モデルの実現する日であると確信しています。

以上、IMSUT One to Gogo Project を発展、進化させて、医科研の長期的な発展を図る計画について述べさせていただきました。これに加えて、今年の10月からは、1年強の予定で、1号館中央、西ウイングの改修工事が始まります。従って、9月までには多数の研究部が引越しを済ませなければいけないという、通常にはない作業も加わります。大学から支援される耐震工事の最後のチャンスですので、喜んでお受けしたとはいうものの、関係する数多くの研究部や事務の方々には大変なご迷惑をおかけすることになることを憂慮しております。所としては、全力でサポートすると同時に、改修終了後は、必ずや今よりもよい環境となるように十分な準備をして、この試練を乗り越えたいと思っております。この改修は冒頭にお示しした、Platinum West Project の夢のキャンパスに至る第一段階でもあります。どうか、ご協力のほどをお願いいたします。

本日は就任の挨拶ですので、わが医科研の多くの夢と希望について、述べさせて頂きました。しかし、結局は「人」に尽きると思います。人を集め、人を育て、人を支援し、人に託することで、医科研は発展します。研究、臨床、支援、どの部門においても全力を尽くす人が、主人公になれるという職場から、世界の頂点が見えてくると信じております。皆さんと一緒に、世界の頂点を目指して、頑張りましょう。これを所長就任の挨拶とさせていただきます。ご清聴、有難うございました。


東京大学医科学研究所 所長
村上 善則