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東京大学医科学研究所共同研究拠点 平成28年度国際シンポジウム"Deciphering Genome Big Data"

東京大学医科学研究所共同研究拠点 平成28年度国際シンポジウム"Deciphering Genome Big Data"

平成29年3月21日(火)東大医科研キャンパス病院棟8階ホールにて、平成28年度国際シンポジウム"Deciphering Genome Big Data"が開催された。近年のシークエンス技術の進歩により、膨大な量のゲノム情報が短時間に解読可能となったが、個人個人のゲノム情報の解釈と医療への応用には、まだ多くの克服すべき課題がある。本シンポジウムでは国内外の第一線のゲノム研究者である先生方をお招きし、それぞれが取り組んでいるゲノム情報解明のアプローチとその利用についてご紹介いただいた。
村上善則所長の開会の挨拶の後、まず招待講演として、米国有数のゲノム解析施設であるHudsonAlpha Instituteのゲノム解析ソフトウェア開発部門のチーフであるElizabeth Worthey博士が、同研究所における膨大なクリニカルシークエンスの現状を紹介された。引き続きCancer Genome and Beyondのセッションでは、当研究所ヒトゲノム解析センターゲノム医科学分野の柴田龍弘教授が、肝細胞がんや喫煙関連がんに特徴的な突然変異パターン(mutation signature)の解明について、続いて東京大学メディカル情報生命専攻ゲノム制御医科学分野の鈴木穣教授が、全ゲノムシークエンス、RNAシークエンス、バイサルファイトシークエンス、ChIPシークエンスなどによるマルチオミックスデータのがん研究への応用について講演された。
午後前半のセッション(Translation of Genome Data for the Diagnosis and Care of Patients)では、当研究所先端医療研究センター臨床ゲノム腫瘍学分野の古川洋一教授が、当施設での次世代シークエンス技術を用いたクリニカルシークエンスの現状とAIの応用の試みについて、横浜市立大学大学院医学研究科遺伝学教室の松本直通教授が、次世代シークエンス技術を用いた希少疾患の責任遺伝子同定における近年の成果について講演された。二つ目の招待講演として、オーストラリア有数のゲノム解析施設Garvan InstituteのMark Cowley博士が、同研究所における希少疾患やがんの診断のために行っている、大規模な全ゲノム解析を中心としたクリニカルシークエンスの現状を紹介された。午後後半のセッション(Genome Big Data and Healthcare)では、東北メディカル・メガバンク機構ゲノム解析戦略室長の安田純東北大学教授が、同バンクの沿革と目標及び現在行われている日本人のゲノムコホート研究について紹介され、大阪大学大学院医学系研究科遺伝統計学の岡田随象教授が独自に開発した遺伝統計解析手法を駆使し、疾患病態解明や創薬を目指す研究を紹介された。最後に、当研究所ヒトゲノム解析センター センター長宮野悟教授のあいさつにより閉幕となった。シンポジウム全体を通して各演者から紹介される最先端のゲノム情報解明の挑戦の数々に対し、熱のこもった活発な質疑応答が展開された。