教授 山梨 裕司

腫瘍抑制分野の目標は生体や組織の形成、維持、機能の制御に重要なシグナル伝達機構の解明とその破綻として発症する悪性腫瘍やその他の難治性疾患の理解と制御にあります。しかしながら、私個人の興味は広く生命現象全般に及んでいますし、我々が新たな治療法の開発に寄与できるような知見を得ることが仮に可能であるとすれば、疾患との直接的な関係の有無に拘ることなく、純粋に科学的な興味の上に常に新しい
知見を追求する以外に道はありません。その為には、それが新しい知見をもたらすものか否かを厳しく自問しながら、自由に、研究を展開することが必要となります。その上で、研究活動にとって最も大切なことは個々の研究者が主体としてその研究を育んでいくことですから、腫瘍抑制分野に所属する研究者全員が、個々の課題を自分の研究として育てていけるように環境を整備し、共に悩みながら進んでゆくつもりです。


もし、我々と共に、主体として研究を進めることに少しでも興味がある場合は、いつでも御連絡いただければ幸いです。人を大切に思い、実験を大切に思う方ならば、どなたでも歓迎致します。いっそう明るく、いっそう力強い研究室にすることが私の希望です。


上記のように、我々は新たな仲間を常に求めています。幸いなことに、今年度も34年前の私自身(修士1年)よりも遥かに高い意識をもって、修士課程の学生が仲間に加わってくれました。これだけでも極めて嬉しいことですが、仲間を迎えることの将来には、共に悩み、苦しみながらも、仲間の成長を実感するという何事にも代え難い喜びが待っています。そこで、現在の仲間と同じく、新たに加わった貴重な人材を大切に育てながら、今年度も、未踏の研究に挑みます。冒頭でも述べたとおり、また、当分野の説明の際にも必ず御話するとおり、我々は未知のシグナル伝達機構の解明それ自体が、疾患との関わりによらず、本質的に重要と考えるグループです。しかしながら、その成果には、未解明の領域の開拓と言う知の冒険としての価値だけではなく、その新たな領域に根ざした前例のない疾患研究への可能性が潜んでいると考えるグループでもあります。それ故に、我々は、自由なシグナル研究の過程で得た独自の知見については、常に疾患との関わりを精査し、病態の解明、診断、治療法開発の機会を幅広く探っています。繰り返しになりますが、もし、我々の研究に少しでも興味をもたれた際には、いつでも、気軽に御来訪頂ければ幸いです。ここに述べた考えを共有する教員、大学院生がそれぞれの課題と真剣に向き合っている姿を御覧頂くことができると思います。個を重んじ、他者と協調しつつ独自の研究を進めゆく人材の育成が私の教員としての希望であり、使命です。


                                                                                        (平成30年4月、山梨)


学歴

昭和55年 4月 東京大学教養学部理科II類入学

昭和57年 4月  同  理学部生物化学科進学

昭和59年 3月  同  卒業

昭和59年 4月 東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻修士課程入学

昭和61年 4月  同  博士課程進学

平成 元年 3月  同  博士課程修了、理学博士



職歴・研究歴

昭和63年 4月 日本学術振興会、特別研究員

平成 2年 4月 東京大学医科学研究所 助手(制癌研究部)

平成 7年 1月  同  休職

平成 7年 1月 アメリカ合衆国、マサチューセッツ工科大学、博士研究員

         (David Baltimore研究室)

平成10年 1月 東京大学医科学研究所、復職

平成13年 3月  同  助教授(改組により癌細胞シグナル研究部)

平成13年 4月 東京医科歯科大学難治疾患研究所 教授(腫瘍ウイルス分野)

平成14年 4月  同  教授(細胞制御学分野に名称変更)

平成20年 4月 東京大学医科学研究所 教授(腫瘍抑制分野)


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