Department of Rheumatology
and Allergy.
Last Updated 2017.11.20

 

 
わたしたちがめざすもの
循 環 型 研 究 開 発
現在の医学が抱えている問題を抽出する
新しい切り口で研究する
新しい領域を創る
新しい考え・解決法を提案する
         
医療・生活の質改善  &  将来を担う医学研究者育成

 
生体システムのストロークを解明し新しい治療を開発する
 


例)
骨格筋量の調節と脂質エネルギー
代謝調節のクロストーク解明
      
肥満と筋萎縮の合理的な同時治療
体組成リモデリング法の開発へ


 

 私自身は、膠原病患者さんを治療する中で副腎皮質ホルモン、 とくにグルココルチコイドの作用に興味を持ち、その作用機構を解明して膠原病治療を進歩させることをめざして研究を始めました。当時、グルココルチコイドの細胞内受容体が核内レセプタースーパーファミリーに属する転写因子であることが判明しました(右図)。 分子生物学に関してずぶの素人である臨床医が図らずもその最先端領域に飛び込んだ、といえます。 その一方で、多くの基礎研究者の方々とも知り合う機会に恵まれました。核内レセプターの研究の勢いは凄まじく、その熾烈な競争を目の当たりにできたことは大きな財産です。 
 私の研究テーマは、グルココルチコイドレセプターによる遺伝子発現制御機構の解明です。当初は、特定の遺伝子のプロモーター活性の制御機構をモデルとして研究しました。また、新しいリガンドの開発やグルココルチコイドレセプター自体の活性制御機構にも手を広げています。しかし、グルココルチコイドの多彩な作用や副作用の仕組みを理解するためには臓器特異的な標的遺伝子を明らかにし、その制御機構を解明することが必要です。そこで、臨床への展開をゴールに設定して、かかる視点からの研究を数年前から立ち上げました。共同研究者の努力と医科研のすぐれた設備と人材により、現在まで、心臓、骨格筋におけるグルココルチコイドレセプター標的遺伝子を明らかにし、それらの臓器の生理機能に与える意義を明らかにしてまいりました。また、グルココルチコイドレセプターの機能異常が疾患と密接に関連することを分子レベルで解明しました。とくに、骨格筋研究では骨格筋量調節の精緻な仕組みを紐解いたとともに、グルココルチコイド大量投与に伴う骨格筋萎縮の治療法を提案するに至っております(下図、詳しい内容は こちら)。

 

  特任講師の清水宣明君を中心としたメンバーらは、これらの研究成果をもとに、骨格筋特異的にグルココルチコイドレセプターを欠失させて、骨格筋における蛋白質分解が抑制されたマウスを作成して詳細な解析を進めたところ、骨格筋~肝臓~脂肪連関を介したエネルギー代謝制御軸を新たに発見しています(下図)。この発見は、脂質の優先的な消費による新たな抗肥満療法や生活習慣病治療法・予防法開発に繋がる結果と考えられます。
 

 ここで「研究成果を臨床に」というフレーズは確かに魅力的です。しかし、いざ自らの仮説による全く新しい治療を試験する当事者になるとまったく別の感情を抱くようになりました。いかに精緻かつ慎重に考え、そして深く研究した結果とはいえ、ヒトに、しかも疾患を有する患者さんにそのような治療を行う際の、恐怖にも似た緊張感は例えようがありません。第一例の患者さんに説明し、同意を取得していざ投与するという時、大げさなようですが、「もう一回医者になった」という感慨を持ちました。これはこの研究に携わったメンバー共通の思いでもあります。
 現在、私どもの研究室では、特任講師の清水宣明君を中心としたメンバーの頑張りによってひじょうに興味ある研究成果が続々と出ております。基礎研究はひじょうに楽しいものですが、とくに生物系の場合はたいへんな時間と労力を要することも事実です。しかし、困っている患者さんをイメージすることができればモチベーションを高く維持できるのです。その意味でも、私たちのグループは、一体となって基礎研究と臨床を推進していこうと努力しています。ぜひ、多くの方に私どもの研究室に参加していただき、患者さんに成果を届けていきたいと願っております。

田中 廣壽