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2.EBVによるB細胞不死化機構の解明
EBVが標的細胞であるB細胞に感染すると細胞は不死化する。その際、EBVは潜伏感染状態にあり、80以上あるウイルス因子の中で11個の限定されたウイルス因子のみが発現している。これら潜伏関連ウイルス因子がEBVによるB細胞の不死化に中心的な役割を果たしていると考えられている。我々は、EBVがB細胞に感染した際、最初の発現するウイルス因子(EBNA-LPおよびEBNA-2)に焦点をあてて解析することによって、ウイルスによる細胞不死化の初期過程を明らかにしようと試みている。
EBNA-LPはEBNA-2のco-activatorであり、様々な癌関連細胞遺伝子やウイルス遺伝子を活性化することによって、B細胞の不死化に大きな役割を果たしている。我々は、EBNA-LP のco-activator機能がどの様なメカニズムで発揮されているかを解析した。その解析の1つにおいて、EBNA-LPの機能が、35番目のセリン(Ser-35)のリン酸化によって制御されていることを明らかにした。また、EBNA-LPのSer-35をリン酸化するPKの同定を試みたところ、宿主細胞PK cdc2であった。(1)において、我々は、CHPKとcdc2は標的因子の同一アミノ酸残基をリン酸化することを明らかにしている。この我々の仮説を支持するように、EBVのCHPKであるBGLF4はEBNA-LPのSer-35をリン酸化することが明らかになった。つまり、我々は、EBNA-LPのコアクチベーター機能は、宿主細胞PK cdc2とウイルスPK BGLF4によるSer-35のリン酸化によって制御されていることを明らかにした。
EBVは、ヒトB細胞に感染し細胞を不死化するが、その際、標的となるB細胞の細胞周期は停止している。よって、分裂期でのみ特異的に活性化されるcdc2は、感染直後においては機能することができない。つまり、EBNA-LPはco-activator機能を発揮できない。そこで、EBVはcdc2の機能を模倣しうるBGLF4をウイルス粒子に保持し、ウイルス粒子を介して細胞内にBGLF4を導入する。BGLF4はcdc2を模倣し、EBNA-LPのSer-35をリン酸化することによって、感染直後の静止期B細胞においてもEBNA-LPの機能発現が可能になると考えられる。EBNA-LPの機能が発揮されると、様々な遺伝子が活性化され、細胞周期が動き始めることが報告されている。細胞周期がいったん動き始めると、分裂期にcdc2が活性化され、EBNA-LP Ser-35は恒常的にリン酸化を受けることが可能となる。その結果、EBNA-LPのco-activator機能が常に発揮され、細胞は効率的に不死化すると考えられる。