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背景(単純ヘルペスウイルス、Epstein-Barrウイルスとは?)
(i) ヘルペスウイルス
ヘルペスウイルス科に属するウイルスは牡蠣などの無脊椎動物から、魚類、鳥類、ほ乳類などを含む脊椎動物に至るまで幅広く分布しており、現在までに130種類以上のヘルペスウイルスが、様々な種から発見されている。これらのヘルペスウイルスはゲノムの構造や生物学的性状によって、さらに3つの亜科(alpha, beta, gamma)に分類される。
ヒトを宿主とするヘルペスウイルスは8種類あり、神経疾患、粘膜性疾患、皮膚疾患、腫瘍性疾患といった様々な病態を引き起こす。また、馬、牛、豚などの家畜や、犬、猫などの伴侶動物には、それぞれ固有のヘルペスウイルスがあり、宿主に重篤な病気を引き起こす。コイヘルペスウイルスの日本でのアウトブレークは記憶に新しい。このように、ヘルペスウイルスは、医学・獣医学領域において極めて重要な病原体群といえる。
(ii) 単純ヘルペスウイルス (HSV: herpes simplex virus)
HSVは、数あるヘルペスウイルス中で、最も研究が進んでいることより、ヘルペスウイルスのプロトタイプと呼ばれている。HSVは、ヒトに脳炎、性器ヘルペス、皮膚疾患、眼疾患、小児ヘルペスなど、多様な病態を引き起こす。脳炎は特に恐ろしく、無治療での致死率は70~90%と非常に高い。ノーベル賞の受賞対象である抗ヘルペスウイルス剤・アシクロビルの投与で、致死率は10%程度に低下する。しかし、生存した患者の2/3には中および重度の後遺症が残る。また、性病としてのHSVの重要性は高く、アメリカ合衆国では、年間約50万人が性器ヘルペスの初感染に罹り、約1,000万人が再発性の性器ヘルペスで苦しむ。HSV感染症の医療費は、年間30億ドル(日本円にして3,500億円)と試算されており、HSV研究の重要性は明らかである。また、HSVは強い神経指向性や高い殺腫瘍能力を有することより、遺伝子治療やウイルス療法の分野でも医学的利用が試みられている。
(ii) Epstein-Barrウイルス (EBV: Epstein-Barr virus)
EBVは伝染性単核症(いわゆるキッス熱)の原因ウイルスである。また、バーキットリンパ腫、上咽頭癌、ホジキンリンパ腫、日和見リンパ腫、胃癌といった様々な腫瘍性疾患に関与している癌ウイルスでもある。本邦では胃癌の7%、つまり、年間約5,000人がEBV陽性胃癌に罹る。また、エイズ患者や移植患者に見られる日和見リンパ腫の大部分がEBV陽性である。